全国屈指の専門病院として治療体制をスケールアップ
北腎会の坂泌尿器科病院が札幌市西区八軒に新築移転
装いも新たにオープンした坂泌尿器科病院(札幌市西区八軒)
Medical Report
社会医療法人北腎会が運営する「坂泌尿器科病院」(坂丈敏理事長・院長)が9月1日、北区からJR琴似駅に近い西区八軒に新築移転を果たした。より質の高い医療を提供するため手術室や外来診察室、病床、透析ベッド数を増やすなどハード面を大幅に強化。前立腺肥大症や尿路結石、前立腺がんの治療で全国屈指の実績を有する専門病院にふさわしいスケールアップがなされた形だ。「医療技術の進歩に対応した体制が整った。これを機に若手の育成にも取り組んでいきたい」と意欲を見せる坂院長に、新病院の概要や今後の展望などを訊いた。(9月25日取材)
需要に応えハード面を大幅強化
次代に向けた医療体制を構築した坂院長(さか・たけとし) 1973年札幌医科大学医学部卒業。札幌医科大学泌尿器科教室入局。三樹会病院勤務を経て87年坂泌尿器科病院を開設。社会医療法人北腎会坂泌尿器科病院理事長・院長。日本泌尿器学会専門医・指導医。日本泌尿器学会代議員
泌尿器分野で全国屈指の実績
同病院は国内有数の泌尿器科専門病院として坂院長を含め9人の専門医を擁する。開院以来、一貫して前立腺肥大症や前立腺がん、尿路結石症、膀胱がん、過活動膀胱などの治療を手がけ、年間の手術件数は約1600件と全国でもトップクラスを誇る。食の欧米化や高齢化に伴い泌尿器疾患で悩む人は増加傾向にあるが、恥ずかしさから受診を控え悪化するケースも少なくない。あらためて主な疾患と治療法について坂院長に解説してもらおう。
まず前立腺肥大症。男性固有の臓器である前立腺はクルミほどの大きさで通常の容積は約20ml以下。加齢に伴い性ホルモンのバランスが崩れ、前立腺が大きくなると尿道が押しつぶされて排尿障害が起こるのが前立腺肥大症だ。通常は前立腺の大きさが40ml以上になると治療を行なうことが多いが、坂院長は500mlまで肥大した患者の手術を手がけたこともあるという。
治療は薬が効かない場合は、ホルミウム・ヤクレーザーというレーザー光を使った低侵襲の「経尿道的前立腺レーザー核出術」(HоLEP)を行なう。この治療は肥大化した前立腺の腺腫だけをくりぬき、尿道への圧迫を解除し尿の出を良くするもの。従来行なわれてきた「経尿道的前立腺切除術」(TUR‐P)は出血が多くなりがちなため、同院ではHоLEP治療をメインに据えており、2018年度の手術件数は249症例で全国トップの実績だ。
「当院で手術を行なう患者の前立腺の平均は100mlです。状態が悪化して尿の出が悪いので管を入れっぱなしにしている患者も少なくありません。高齢の人が罹りやすい病気ですが、HоLEPは安全な手術なので気軽に相談してほしい」
尿の通り道に結石がはまってしまう尿路結石症については、尿管内に内視鏡を進めて結石を粉砕する「経尿道的腎尿管結石砕石術」(TUL)を行なう。腎臓内の大きな結石は、背中から腎臓に内視鏡の通り道をつくり、腎臓の結石を壊して取り除く「経皮的腎砕石術」(PNL)を実施。尿路結石の手術件数は306症例(2018年度)で全国4位。同院では今回の移転新築に伴い「体外衝撃波結石破砕術」(ESWL)の最新装置も導入し、治療の選択肢を広げている。
膀胱がんでは、膀胱から内視鏡を挿入し高周波電気メスでがんを切除する「経尿道的膀胱腫瘍切除術」(TUR‐Bt)を実施している。内視鏡は光線力学診断(PDD)を用いた蛍光内視鏡システムを導入。この光線力学診断により膀胱がんが赤く蛍光発色するため、先の切除術の精度が高いという。
また、冒頭述べた「脳神経・放射線クリニック」を利用して「強度変調放射線治療」(IМRT)による前立腺がんの治療も行なっている。この治療は放射線を照射する範囲や角度を細かく調整することで、周辺臓器への影響を抑えることができるメリットがある。2019年の前立腺がんの放射線治療は94件で道内でのシェアもトップクラスとなっている。
「前立腺肥大症や尿路結石の手術については札医大附属病院や北大病院からの紹介もあり、地域的には稚内や岩見沢、苫小牧、函館、北見などほぼ全道から患者さんがいらっしゃいます。今回、病院機能を大幅に拡大・強化したことでより多くの治療要望に応えていけると思います」
広く使いやすくなった手術室
結石を粉砕する最新の体外式衝撃波装置も導入
療養環境も大きく向上(写真は病室の準個室)
患者にとって良好な透析環境を整備した
次代に向けた医療体制を構築した坂院長(さか・たけとし) 1973年札幌医科大学医学部卒業。札幌医科大学泌尿器科教室入局。三樹会病院勤務を経て87年坂泌尿器科病院を開設。社会医療法人北腎会坂泌尿器科病院理事長・院長。日本泌尿器学会専門医・指導医。日本泌尿器学会代議員
広く使いやすくなった手術室
結石を粉砕する最新の体外式衝撃波装置も導入
療養環境も大きく向上(写真は病室の準個室)
患者にとって良好な透析環境を整備した
地域医療の充実と後進の育成
道内では医師の地域偏在で地方によっては泌尿器科分野の治療が受けられないことが課題となっており、このような中で北腎会は、述べたようにサテライト機能を持たせた治療拠点「坂泌尿器科千歳クリニック」「坂泌尿器科北広島クリニック」を展開し、地域の要望に応えてきた。これに先述の「坂泌尿器科新川クリニック」が加わったことになる。
これらのクリニックで尿路結石や膀胱がんの診断がつき、手術や入院が必要な場合は本院で対応。患者の状態は電子カルテで本院とクリニックが共有できるシステムを導入しているため、迅速な措置が可能だ。
本院では泌尿科の医師がいない新ひだか町や新篠津村、夕張市に定期的に医師が出向く診療支援にも取り組んでおり、北腎会が掲げる「地域に根差した医療」を実践している。
「開院から現在まで全力で泌尿器科の治療に取り組んでこれたのは、グループのネットワークによるところが大きい。新病院では次代を担う泌尿器科専門病院としての体制を整備しました。今後も北腎会の基本方針である“迅速、安全、誠意、笑顔”の4つを基本に、よりよい医療の提供に尽力していきたい」
こう語る坂院長は後進の育成にも意欲的だ。
「我々の医療技術、とりわけHоLEPとTULの実績については大学病院からも一目置かれています。新病院の開院を機に若手を育て医療技術の承継にも取り組んでいきたい。
今後は医師の教育プログラムをつくる計画もあります。手技を覚えるため全国の大学病院から医師を3カ月派遣してもらうなどして、その中から残ってくれる医師が出れば嬉しいですね」
泌尿器科領域で全国の治療をリードし、医療界に貢献する拠点病院へ。今回の新築移転で坂泌尿器科病院は、また新たな一歩を踏み出したと言えそうだ。
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