はたけやま・こうせい
1976年室蘭市出身。2002年札幌医科大学卒業後、同医大附属病院第一内科(現消化器内科学講座)研修医に。市立室蘭総合病院、札幌医科大学附属病院を経て札幌厚生病院で消化器内科医として勤めた後、08年北海道立紋別病院(現広域紋別病院)に勤務。11年同病院消化器内科診療部長、12年副院長に就任。18年に独立し札幌市内に「円山はたけやま内科」開業。41歳
Medical Report
不安を安心に変える内視鏡検査を実践
札幌市の人気住宅街・円山地区に今年4月、「円山はたけやま内科」がオープンした。ここの畠山巧生院長は、この春までオホーツクの広域紋別病院で10年もの間、地域医療に従事。消化器内科を専門としながら地域の人々が抱えるさまざまな病気に真正面から向き合ってきたオールラウンダーの医師だ。今回の独立開業にあたり「総合診療医的な役割は診療所にこそ求められる」と意気込む畠山院長に、今後の抱負を訊いた。(5月15日取材)
鉄のまち・室蘭で生まれ、地元で内科・小児科の白鳥台医院を営む父の背中を見て育った畠山巧生院長。やがて大人になり、父同様に総合診療医としての役割が求められる紋別での地域医療に、約10年従事することになったのは奇縁といえる。
2002年に札幌医科大学を卒業し研修医となった当時に同医大附属病院の第一内科(現消化器内科講座)を志望したのは、消化器のほか膠原病、血液疾患など幅広い分野を学ぶことができたからだという。
内視鏡検査を多く手掛けるようになったのは、第一内科2年目に派遣された市立室蘭総合病院勤務の頃。診療経験を重ねるごとに、消化器内科医のやりがいを強く感じるようになった。07年には消化器専門の診療技術を高めたいと考えて札幌厚生病院に勤務。その1年後、畠山院長にとって大きな転機となる北海道立紋別病院での勤務が始まった。
「当初、紋別病院での勤務は1年という話でした。1年間の勤務で地域医療の難しさや1人で検査治療を行う責任感は大変でしたが、同時に大きな充実感を得ることができました。スタッフも協力的で、患者さんの感謝の言葉から地域に必要とされていることを実感できるやりがいは、これまで経験したことがなく、自分から希望して紋別に残ることにしました」(畠山院長)
紋別の10年間はあっという間だったと振り返る。その間、消化器内科医としては胃・大腸内視鏡検査をはじめESD(粘膜下層剥離術)、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)など幅広く多くの検査治療を手がけた。
また風邪から救急診療まで、地域の人々のさまざまな病気にも対応してきた。さらにDMAT(災害派遣医療チーム)にも従事。12年には同病院副院長に就任し、紋別・遠軽地域にとって基幹病院の運営全体を切り盛りする管理職としての経験も積んだ。こうしたオールラウンダーの活動は正に、"紋別のかかりつけ医"と呼ぶに相応しいものだった。
「かかりつけ医としての土台は、長年従事した地域医療の中で培われました。総合診療医的な役割は、クリニックにこそ求められるものだと思います」
その畠山院長は今年4月、札幌円山地区の主要スーパー・東光ストア円山店そばに新設されたメディカルビルに「円山はたけやま内科」を開院。円山のかかりつけ医として新たな一歩を踏み出した。
畠山院長と看護師、管理栄養士の国家資格を持った3名の医療事務員から成る5名体制の同クリニック。内視鏡はオリンパス社製の最新鋭機を導入しており、理念としているのは「不安を安心に変える」だ。
「胃・大腸の内視鏡検査を苦手に感じている方は多いと思いますが、レントゲンや心電図と同じように、それほど身体に負担を掛けることのない検査です。胃がん・大腸がんは検査を受けて、早期発見・早期治療すればかなり防ぐことができます」
畠山院長自身、何度も内視鏡検査を受けており、紋別勤務時は市民公開講座で自身の検査の様子を収めた動画を紹介しながら、消化器疾患の予防啓発にも取り組んでいた。
「消化器疾患で懸念される代表格の疾患は胃がんと大腸がんですが、胃がんについては発生原因とされるピロリ菌の除菌療法が普及しているので減少傾向にあります。一方、大腸がんは増加傾向にあります」
国立がん研究センターが2015年時点でまとめた「新たにがんと診断される人数」に関する調査では、大腸がん、肺がん、胃がんの順になっている。畠山院長は、便の異常や腹痛など何らかの症状が出る前に、自発的に内視鏡検査を受けるべきとアドバイスする。
「手軽に身近に内視鏡検査を受けて頂くために当日や土曜日の胃カメラに対応しています。また時間がなく胃カメラ・大腸カメラを同じ日に受けたい方の相談にも応じています」
同クリニックでは公式ホームページを通じて胃内視鏡検査のネット予約を行なっており、それをきっかけに主に若い年代の受診者が増えているという。
病診連携についても杞憂はない。提携先は出身の札医大のほか手稲渓仁会病院、札幌同交会病院などで、こちらも充実している。
「当初、内視鏡に抵抗があった方も、とても楽でしたと満足された表情を見せてくれると、とても嬉しくなります」と笑顔で語る畠山院長。
地域と歩む「円山はたけやま内科」の今後に注目していきたい。