人工関節置換術の新たな拠点に飛躍 移転新築する我汝会「さっぽろ病院」

2018年6月号

2年後の移転新築を見据え「さらなる医療の充実を図りたい」と語る春藤院長

(しゅんどう・もとゆき)旭川市出身。1989年北海道大学医学部卒業。北海道大学病院、市立旭川病院、斗南病院(札幌市)、小林病院(北見市)を経て93年から「えにわ病院」に勤務。2007年から「さっぽろ病院」副院長、12年4月に同院長に就任。日本整形外科学会整形外科専門医。54歳

Medical Report
人工関節置換術で全国トップクラスの治療実績を誇り、道内外から患者が訪れている医療法人社団我汝会「えにわ病院」(木村正一理事長・恵庭市・150床)。この「えにわ病院」の“分院”として2007年に誕生したのが「さっぽろ病院」(札幌市・50床)だ。このほど同病院では、JR苗穂駅の移転に伴う新駅北口周辺の再開発予定地に土地を取得。2020年夏をメドに新築移転することを明らかにした。JR苗穂駅直結となる予定の新病院は現在の50床から88床に増床し、通年リハビリの導入など機能訓練も強化していく予定だ。「利便性を高めた新病院では、患者の早期離床・早期退院を目指し、今まで以上に質の高い医療を提供していきたい」とする春藤基之院長(54)に展望と抱負を訊いた。(4月20日取材)

我汝会の本部が置かれる「えにわ病院」はJR恵庭駅東口直結

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誕生する新病院はJR苗穂駅直結 患者の利便性を高め規模を拡大

増加する患者のニーズに対応するため移転を決断

 2007年当時、増田武志理事長(現会長)の下で我汝会が「札幌でも同水準の医療を提供したい」と旧安井整形外科病院を経営統合して北区にオープンしたのが「さっぽろ病院」だ。
 旧安井整形外科病院の施設が老朽化していたこともあり3年後の2010年4月には、東区の現在地へ新築移転。リハビリテーションの強化をはじめMRIやCTを刷新、電子カルテを導入するなど診療体制の効率化に取り組んできた。
「股関節」を専門とする春藤院長をはじめ「脊椎外科」「膝関節」「上肢・肩関節」と各整形外科各分野に精通する専門医を揃え、安全・安心な質の高い地域医療を提供。また、麻酔科医の他に内科・循環器の専門医も常勤し、健康不安や術後のトラブルなどにも適切に対応している。
 今では本院のえにわ病院と同じく道内外から患者が訪れ、2017年には人工関節置換術を含む手術件数が開院時の2倍に当たる1490症例を記録。2つの手術室はほとんどフル稼働の状態だという。
「手術室はもとより新築移転時には70人ほどだった職員も100人を超し、施設が全体的に手狭になってきました。3年ほど前からスタッフの休憩室が確保できず、駐車場も不足し患者さんにご迷惑をかけている状況です。現場の責任者として新築移転を検討していたところでした」(春藤院長)
 そんな時に建設候補地として浮上したのが、JR苗穂駅の移転に伴う新駅北口周辺の再開発予定地(東区北5条東10・11丁目)だった。JR北海道では苗穂駅を現在地より300m西側に移し、橋上化して2018年度中に開業する計画。この動きに合わせて新駅北口に隣接するJR北海道の研修センター跡地約1・4haで再開発が立案され、売却した土地には2020年度末までに、医療施設をはじめ高層マンションやサービス付き高齢者住宅、商業施設などが整備されることになっている。
 この中で、さっぽろ病院は今年2月、新駅北口付近の約6700㎡を取得。2年後の2020年7月をメドに新築移転を進めることになったものだ。
「新病院の建設予定地は、移転する苗穂駅北口から約50mの場所。当院を受診される皆さんは、運動器疾患で足の不自由な患者さんが多く、遠方から来られる方も少なくないので、JR駅直結という立地の良さは最大のアピールポイントになると思います」(春藤院長)
 新病院のベッド数は、急増する手術患者に対応するため現在の50床から88床に増床を計画。手術室を2室から4室に増やすほか、МRIも2台体制にする予定だ。
 リハビリの強化にも乗り出す。同院は早期離床・早期退院をサポートするため手術の翌日から歩行訓練などのリハビリを行なっている。
 訓練は午前と午後の2回実施され、荷重歩行や生活動作などのプログラムを導入し高い効果を上げてきた。ただ、大型連休や正月休みなどは理学療法士が不在になるためリハビリが疎かになることが課題だった。この現状を踏まえて新病院では理学療法士らリハビリスタッフを増強。365日シフト制を取ることで、通年でリハビリを提供していく計画だ。
「以前に比べ患者さんの意識が高くなり、早く回復して社会復帰したいという方が増えてきました。また、内科的に健康なお年寄りが増えているので、当院では80代や90代でも人工股関節置換術を受ける患者さんも少なくありません。早期離床・早期退院を目指すうえでもリハビリは、ますます必要になると思います」(春藤院長)
 新病院建設に向けては、職員の声や要望を反映させながら基本設計を作成し、実施計画を取りまとめていく。職員は常勤の医師(整形外科5人、麻酔科3人、内科医1人)を含む現在の106人から180人程度に増員する予定だ。

10年余りで移転新築が決まった「さっぽろ病院」(札幌市東区)

新病院ではリハビリ部門も大幅に強化される(写真は現在のさっぽろ病院)

現在のJR苗穂駅

10年余りで移転新築が決まった「さっぽろ病院」(札幌市東区)

新病院ではリハビリ部門も大幅に強化される(写真は現在のさっぽろ病院)

現在のJR苗穂駅

我汝会の本部が置かれる「えにわ病院」はJR恵庭駅東口直結

我汝会の木村正一理事長

「早期回復」の要望に応える低侵襲の人工股関節置換術

 春藤院長が手がける治療の一端を覗いてみよう。歩き始めた時や立ち上がる際に、足の付け根にある股関節に感じる痛み。その原因の多くは「変形性股関節症」とされ、加齢と共に膝関節の軟骨がすり減り、炎症を起こしたり変形することで関節に痛みを感じる。
 股関節は筋肉や靭帯に囲まれているため症状が自覚しにくく、進行してから気付くことが多い。足の付け根の痛みの他にお尻や太ももの違和感を訴える人も少なくない。
 患者の8割が女性で40から50代に多く発症する。軟骨がすり減る原因で最も多いのが、大腿骨の頭を屋根上に蓋う骨盤の骨「臼蓋」の形に異常がある「臼蓋形成不全」だ。通常、大腿骨の頭は臼蓋で8割以上包まれているが、臼蓋形成不全は大腿骨を覆っている部分が小さいため、骨盤の軟骨に負荷がかかりすり減ってしまう。
 変形性股関節症の治療は、症状が軽い場合は体重のコントロールや筋肉トレーニングで痛みを軽減し、痛みがひどい時は外科的手術を行なう。外科的手術には、骨の一部を切り取って温存する「寛骨臼骨切り術」がある。この手術は臼蓋を半球状にくり抜き、臼蓋と大腿骨頭のかみ合わせを矯正することで痛みを改善する。
 症状が重たい場合は、傷んだ関節の代わりに金属やセラミックなどで作られた人工物に置き換える「人工股関節置換術」が選択肢となる。日本では40年以上前から一般的に行なわれるようになった治療法で、手術後は痛みが無くなり正常に歩くことができる。
 人工股関節をめぐっては、ゆるみや脱臼など耐久性の問題から「1日何歩以上歩いてはいけない」「何キログラム以上のものは持ってはいけない」「正座や和式トイレはいけない」など日常生活の制限があったが、近年は耐摩耗性に優れた材質や大きな可動域を有する人工関節のデザイン、低侵襲の手術法が確立されている。
 同院では人工股関節置換術の際、切開を最小限にする低侵襲の手術法を採用。従来の一般的な手術では20センチほどの切開が必要だったが、7~8センチほどの切開で中臀筋の前にある大腿骨幕張筋と縫工筋の間を選り分けて人工物を挿入する。
 筋肉を切らないため体への負担が少なく、手術も1時間ほどで終わるので術後の回復も早い。同院では、この治療法と手術の翌日から始めるリハビリで入院期間を大幅に短縮。ほとんどの患者は術後5日目に退院していくという。
 股関節治療のエキスパートとして知られる春藤院長は高校時代から野球選手として活躍してきたスポーツマン。肩や肘を痛めた経験から整形外科医を目指したという。
「えにわ病院に私が入職したのは93年のこと。当時、同病院の整形外科には大学野球部の先輩でもあった増田武志先生(我汝会会長)と菅野大己先生(えにわ病院名誉院長)の2人しかおられなかった。以後、医師がどんどん増えて人工関節置換術では全国トップクラスの治療実績を誇る病院へと成長するなど夢にも思いませんでした。
 その間、常に患者さんの身に立って親身に診療に当たる増田、菅野両先生から医師としての心構えとスキルを学びました」と振り返る。
 春藤院長が手がける股関節治療の中でも「寛骨臼骨切り術」には定評がある。小さな切開による低侵襲で正確な手術は回復も早いと好評で、昨年に本人が手掛けた手術の数は、人工股関節置換術(380症例)をはじめ全体で420症例にも上る。
「特に近年は高齢化の影響で加齢に伴い軟骨がすり減ったり、骨粗しょう症で骨がつぶれたりすることで手術が必要になるケースも増加しています。
 早く回復したいという患者さんや地域のニーズに応えるためにも、職員と一致団結して最善を尽くしていきたい。さっぽろ病院の移転新築は、そのためのステージづくりにほかなりません」(春藤院長)


医療法人社団我汝会 さっぽろ病院
札幌市東区北24条東1丁目3-7
☎ 011-753-3030

中和興産
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