アイソトープ検査装置を備えた注目の「さっぽろ甲状腺診療所」

2018年3月号

いわく・けんじ 2001年昭和大学医学部卒業。同大学藤が丘病院内分泌代謝科、伊藤病院内科医長などを経て17年11月さっぽろ甲状腺診療所院長に就任。日本内科学会総合内科専門医、日本内分泌学会内分泌代謝専門医・指導医・評議員。日本甲状腺学会専門医。日本糖尿病学会糖尿病専門医

親子3代に亘る専門病院の診療連携施設を
札幌で開業

 伊藤病院は、グループを率いる伊藤公一理事長の祖父で甲状腺外科医の伊藤尹(ただす)氏が、戦前の1937年に東京の表参道(渋谷区)で開設した医院を起源とする専門病院。以来、伊藤家3代に亘り甲状腺疾患に特化した専門治療を行なう国内屈指の医療機関として成長し、多くの患者に朗報を与えてきた。
 1日に約1200人もの外来患者が訪れる伊藤病院の診療連携施設が札幌で産声を上げたのは、昨年11月1日。2004年の「名古屋甲状腺診療所」に続く国内2カ所目の連携施設として、最先端設備を備えた拠点が北海道で誕生した形だ。
 これまで伊藤病院で内科医長を務めていた岩久院長は、「どちらかといえば北海道は甲状腺治療の過疎地域で、東京の伊藤病院には羅臼や弟子屈、上川などからやってこられる患者さんもいました。そのような患者さんのために、我々が現地に赴こうという思いで開院の運びとなりましたが、実際に診療に当たっていると『待っていた』と言ってくださる患者さんもいます」と話し、札幌での診療に手応えを隠さない。
 医師は岩久院長のほか、伊藤理事長と伊藤病院の内科部長が月に一度来札し診療に当たる。医師を中心に看護師3名、臨床検査技師3名、放射線技師2名、薬剤師1名、事務職員4名の甲状腺診療に特化したトレーニングを積んだスタッフがチームを組み、専門性の高い検査、治療体制を完備。検査の結果、外科的な手術が必要と判断した場合は、連携する札幌市内の総合病院を紹介するサポート体制も整備している。
 さっそく甲状腺疾患について見ていこう。甲状腺は喉仏の下にあり、喉の気管の前に蝶が羽を広げたような形で張り付いている臓器だ。海藻などに含まれるヨウ素(ヨード)を基に体の新陳代謝を調整する甲状腺ホルモンをつくり、血液中に分泌する。健康な時は、脳の一部である脳下垂体が甲状腺刺激ホルモン(THS)を出し、甲状腺ホルモンの分泌量をコントロールしているが、何らかの原因で甲状腺に異常が生じると、ホルモンの分泌量が多くなったり少なくなったりする。
 日本人の女性の10人に1人以上は甲状腺に何らかの異常があるとされ、「橋本病」(慢性甲状腺炎)、「バセドウ病」(甲状腺機能亢進症)、「甲状腺腫瘍」(腫瘍性疾患)が疾患の9割を占める。
 橋本病はストレスなどで自己免疫システムが崩れ、免疫細胞が甲状腺を異物として攻撃。このため甲状腺に炎症が起き首が腫れる疾患だ。症状が進むと甲状腺ホルモンの分泌が減り、新陳代謝が低下することで全身の活力が落ちたり、便秘や体重増加、むくみ、生理不順などのほか疲れやすいなどの不定愁訴が表れる。患者は40代から50代の女性が多く、更年期障害やうつと間違われることもあるが、専門の医療機関で甲状腺ホルモンの分泌量を測る血液検査を行なえば簡単に分かる。
「橋本病は、甲状腺の機能が正常な場合が多く、ほとんどが経過観察となりますが、症状が進み甲状腺ホルモンの分泌量が低下した場合は、ホルモン剤を飲み不足分を補います。患者さんの5人に1人はホルモンの分泌量が低下するので定期的な検査が必要です」(岩久院長)

医療法人社団甲仁会 さっぽろ甲状腺診療所
札幌市中央区大通西15丁目1-10 ITOメディカルビル ☎011-688-6440
HP:http://www.kojin-kai.jp/sapporo/

グループを率いる伊藤公一理事長

さっぽろ甲状腺診療所の受付。木目調の内装が心地よい

伊藤病院と同様に導入されているアイソトープ検査装置

エコー検査も最新機器で対応

アイソトープ治療用カプセル

参道で全国から患者を集める伊藤病院

バセドウ病や甲状腺がんに対応するアイソトープ治療

 よく耳にする「バセドウ病」も自己免疫疾患のひとつで20代から40代の女性に多い。こちらは橋本病とは逆に甲状腺ホルモンが過剰に作られるため起きる疾患だ。代謝が高まることで息切れや動悸、イライラする、疲れやすい、手の震え、汗かき、髪の毛が細くなり抜けやすい、食べても痩せる、眼球突出などさまざまな症状が出てくる。
 治療法は甲状腺ホルモンの合成を抑える薬物療法が中心で、約3分の1が2、3年で寛解するが、薬物療法で重篤な副作用が出たときや、いつまで経っても改善されない場合は、甲状腺を切除する甲状腺全摘術か、放射性ヨウ素を投与して甲状腺の一部を壊すアイソトープ治療が選択肢となる。
 このアイソトープ治療は、甲状腺がヨウ素を取りこむ性質を利用して、1940年代前半に米国で開発された手法だ。治療は放射性ヨウ素を含むカプセルを服用するだけ。放射性ヨウ素が放出する放射線が甲状腺の一部を破壊し、ホルモン量を減らす仕組みだ。日本では設備を整えた専門医療機関で治療を受けることができる。500MBqまでなら外来治療も可能だ。
「アイソトープ治療は、薬で症状をコントロールできない時や重篤な副作用が出現した患者さんが対象。まず、あらかじめヨウ素を含む食べ物を制限しておきます。治療の前にヨウ素制限がうまくいったかどうかを確認するため、ヨウ素の摂取量を調べた上で、アイソトープ治療用カプセルを内服します。被曝を心配する人もいますが、服用したヨウ素のうち甲状腺に取りこまれないものは、ほとんど尿中に排出されるので安心です。日本では、放射線治療による被曝を心配する方が多いですが、米国で1946年から64年にかけて、アイソトープ治療を行なった約3万6千人を1991年まで追跡調査した結果、バセドウ病アイソトープ治療による特定の発がんとの関連は、ないことがわかっています」(岩久院長)
 甲状腺のしこりには良性と悪性があるが、多くが良性だという。良性のしこりは良性腫瘍と腫瘍によく似た過形成がある。甲状腺悪性腫瘍である甲状腺がんのうち、約9割は「乳頭がん」で進行が遅く予後も良好だ。一方、約5%に出現する「濾胞がん」は手術をしないと診断がつかないが、多くの予後は比較的良好だという。
 診療では超音波検査と細胞診を行なう。がんと診断されたら手術が治療の基本になる。切除範囲はがんの進行度とリンパ節転移により定めるが、多くの甲状腺がんは進行が遅いためリンパ節転移をしてもきれいに取り去ることができる。また再発の危険度の高い進行がんの一部は全摘後に再発予防を目的とした治療法としてアイソトープを服用する方法もある。
 いたずらに被曝を怖れずに専門医と相談の上、より良い治療法を選択したいものだ。

医療法人社団甲仁会 さっぽろ甲状腺診療所
札幌市中央区大通西15丁目1-10 ITOメディカルビル ☎011-688-6440
HP:http://www.kojin-kai.jp/sapporo/

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伊藤病院に比べて遜色ない“高度な検査と治療”を提供

「さっぽろ甲状腺診療所」は、地下鉄東西線「西18丁目」駅5番出口から徒歩2分の場所にある。大通公園に近い都心に立地し、ガラス張りの瀟洒な6階建てのビルが目をひく。1階には調剤薬局、2階は睡眠障害の専門クリニックが入居し、地階と3階以上が同診療所のスペースとなる。
 特筆すべきひとつは、診断のつきづらいバセドウ病や特殊な結節の確定診断ができる最新のアイソトープ検査装置を備えていること。甲状腺診療に特化した医療チーム、それを支えるハードの面で伊藤病院と同レベルの外来体制を構築したことが、「さっぽろ甲状腺診療所」最大の特徴と言っていい。
 地階にあるのはアイソトープの処理施設で、3階はアイソトープ検査・治療などのフロア。4階は臨床検査関連で血液、エコー、心電図などの検査と解析を行なうエリア。5階が受け付けと診察室で、6階は管理部門という構成になっている。
「アイソトープ治療では、扱う線量も多いので廃液などが外部に漏れるなどの事故を起こさないよう法律上の規制も厳しい。患者さんに安全安心な治療を受けてもらうため、このビルの建設では放射性廃棄物処理施設の工期に最も時間をかけ、大きなコストを投じました」(岩久院長)
 さっぽろ甲状腺診療所を率いる岩久院長は、甲状腺専門医としてこれまでに約7千人もの患者の治療に当たってきたエキスパートだ。
「札幌で診療を始め、より望ましい治療を必要とする患者さんがまだまだいると実感しています。患者さんが一番良い治療法を選択するお手伝いをするのが我々の務め。甲状腺疾患の専門治療拠点として、より特化した取り組みを深めていきたいと思います」(岩久院長)

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