さっぽろ麻生乳腺甲状腺クリニックに乳がん検査の落とし穴と対処法を訊く
かめだ・ひろし 1980年北海道大学医学部卒業。同大第1外科入局、小児外科・乳腺甲状腺外科の診療と研究に従事する。2001年麻生乳腺甲状腺クリニック開院。17年6月に法人化し、施設名を医療法人社団北つむぎ会さっぽろ麻生乳腺甲状腺クリニックに改称。日本外科学会専門医、日本がん治療認定医機構暫定教育医・認定医。医学博士
年間7万人以上の女性が発症する乳がんだが、治療法の進化もあって早期発見なら9割は克服できると言われている。この中で気をつけたいのが、日本女性に多い「高濃度乳房」だ。乳腺が密集している高濃度乳房では、自治体検診のマンモグラフィー(乳房X線検査)だけでは異常を見逃すリスクがあるという。多くの自治体は本人の乳房のタイプを受診者に知らせていないため、国は新年度から情報提供に乗り出す方針だ。もし、高濃度乳房だと分かった場合はどう対処すべきなのか。医療法人社団北つむぎ会「さっぽろ麻生乳腺甲状腺クリニック」(旧麻生乳腺甲状腺クリニック)の亀田博院長に乳がん検診の最新事情やがん患者の心のケアについて解説してもらった。
高濃度乳房のリスクと「エコー検診」の有用性
医療法人社団北つむぎ会 さっぽろ麻生乳腺甲状腺クリニック
札幌市北区北38条西8丁目 ☎011-709-3700
HP:http://www.asabu.com
3Dマンモグラフィーによる検査画像(写真の乳房は「乳腺散在」タイプ)
エコー検診で発見された乳がん(写真右上の青い範囲が病巣部分)
エコー検診は最新機器2台で対応している
3Dマンモグラフィー
医療法人社団北つむぎ会 さっぽろ麻生乳腺甲状腺クリニック
札幌市北区北38条西8丁目 ☎011-709-3700
HP:http://www.asabu.com
3Dマンモグラフィーによる検査画像(写真の乳房は「乳腺散在」タイプ)
エコー検診で発見された乳がん(写真右上の青い範囲が病巣部分)
エコー検診は最新機器2台で対応している
3Dマンモグラフィー
がん患者の心のケアも大きなテーマのひとつ
では、女性は乳がん検診とどう向き合ったらよいのだろうか。
「特に若年層で乳がんの家族歴などがある人は、まずは乳腺専門の医療機関でエコーを受けることをお勧めしたい。マンモ検診をめぐっては医療被曝のリスクが指摘されています。30代の女性が8年連続でマンモ検診をすると、がんになる可能性が高まると言われており、米国ではかねてからマンモによる検診を40歳から45歳に引き上げています。日本も現在40歳からの検診が近いうちに45歳になるかもしれません」(亀田院長)
現在40歳以上を対象とした自治体検診でもマンモに加えエコーも実施する専門医療機関がある。札幌市と石狩市の自治体検診を担っている「さっぽろ麻生乳腺甲状腺クリニック」でも、両方の検査に対応している。
同クリニックでは、乳房を多方向から撮影し立体的に再構成する3Dマンモグラフィーなど最新鋭の機器を整備。全体像のみの画像では分かりにくかった内部のがんの発見に効果を上げている。
エコー検査装置もエラストグラフィ(超音波組織弾性影像法)を搭載した最新機器を導入している。エラストグラフィは良性の腫瘍に比べがんの組織が硬いことに着目し、超音波でしこりの硬さを検出し画像化する。画像では柔らかい部分は赤、平均的な部分は緑、硬い部分は青というように組織の硬さが色分けされる。このほか、マイクロバブルという微細な気泡を造影剤として用い、詳細な血流情報を画像化する最新のエコーも備え、早期発見、早期治療に取り組んでいる。検査は熟練した技師2人(男性1人・女性1人)が行なっているので、何かと安心だ。
ほとんどの乳がんは、転移がなければ抗がん剤治療と手術で完治し、腫瘍が2センチ以下であれば10年後の無病生存率(再発転移が見られない状態)は95%を超える。この中で大きなテーマとなっているのが、がん患者の心のケアだ。
「多くの患者さんは、がんの告知を受けると『まさか私が』という否定から始まり、怒りや悲しみのプロセスを経て自分の病気を受容するようになります。そこで大事になってくるのが医療現場、家族を含めて本人に寄り添ってくれる人がいるかどうかです」と亀田院長は説明する。
近年、がん治療の分野では患者の心の治療を専門に行なう「精神腫瘍医」の存在が注目されている。患者はがんを受容しながら治療を受けるが、中には落ち込みから不眠やうつ状態になる人も少なくない。
このような患者の話に耳を傾け、適切なアドバイスや治療を行ないながら患者をサポートするのが精神腫瘍医の役割だ。
がん対策基本法に基づき、がん診療連携拠点病院(※質の高いがん医療の全国的な均てん化を図ることを目的に整備された病院。既存病院の中から都道府県知事が推薦し、厚労省の認可で指定される)では、精神腫瘍医や臨床心理士、ソーシャルワーカーなどがチームを組み、患者の心のケアに当たっている。
では、精神腫瘍医や臨床心理士のいない専門クリニックでは、患者の悩みにどう対応しているのか。さっぽろ麻生乳腺甲状腺クリニックの患者にも軽いうつやパニック障害で悩む人が少なくないという。
「乳がんになる前から、そういう症状がある方もいらっしゃいますし、がんと告知されてから発症するケースもあります。当クリニックが開院した頃に比べると、最近は地域にメンタルクリニックが増えています。悩みがある時は一人で抱え込まずに主治医に相談し、通いやすいメンタルクリニックを紹介してもらうのもひとつの方法です」(亀田院長)
不安や落ち込みが強い時は、メンタルクリニックの活用を視野に入れながら、適切ながん治療を受けるよう心がけたい。
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