
自ら信頼を失墜させた苫小牧信用金庫
(写真は苫小牧市内の本店)
苫小牧信用金庫(本店苫小牧市・小林一夫理事長)が5月9日、法令遵守や経営管理に問題があったとして北海道財務局から業務改善命令を受けた。同信金は、信用金庫法で禁止されている不動産関連業務を営む子会社を有し、以前から同金庫と人事・業務面で関係性が深かったにもかかわらず、理事長、会長を歴任した元理事、窪田護氏(86)の指示と関与により事実関係を当局に隠蔽していたという。道財務局は「独裁的な経営に過度に依存し、風通しの悪い組織文化が醸成されてきた」と同金庫を厳しく非難している。
(佐久間康介)
苫小牧信金は、かねて収益力の高い信金として定評がある。これまでの決算で純利益を振り返ってみると、2023年度は18億5500万円で北海道信金、旭川信金に次いで3位、22年度は20億3700万円で1位、21年度は17億9400万円で1位となっている。預金量では、道内20金庫中で5番目の約5300億円。メガ信金と呼ばれる預金量1兆円超えの北海道信金、旭川信金の半分にもかかわらず、収益力はこれらメガ信金を凌駕する。
こうした高収益体質を築いた反面で、今回の事態に至る原因をつくったのが元理事の窪田護氏だ。
この窪田氏は2001年から10年まで理事長、10年から13年は会長、以降は非常勤理事として特別顧問を2024年まで務めた。その間に苫小牧商工会議所副会頭も務め、地場経済のリーダー的存在として「まちなか交流館」の建設や各種イベント開催を牽引。中心市街地に賑わいを創出するなど、まちづくりに貢献したことを評価され、2013年には苫小牧市から「市政功労者」表彰を受けている。
だが、窪田氏を知る札幌の経済人は「並みのワンマンではなく強烈なワンマンだった」と同氏を評する。顕著な功績がある一方で影の部分も多かったが、その影は窪田氏が金庫を去るまで決して表に出ることはなかった。
それが明らかになったのはどういう経緯からか。ある金融関係者は、「おそらく何かの事案が財務局に報告されたことで、芋づる式にこれまでの法令違反が発覚したのだろう」と話す。窪田氏が健康上の理由から特別顧問を辞し、金庫を去ったのは昨年4月。それから1年、本人が高齢者施設に入り、文字通り影響力がなくなったタイミングでこれまでの不祥事が噴き出した格好だ。