落ち着いてきたかと思えば途端に感染者数を急増させ、まるで波状攻撃を仕掛けているような新型コロナウイルス感染症の猛威。その度に飲食店では潮が引くように客足が遠のき、加えて行政からもさまざまな営業制限が求められた。一番の繁忙期である11月頃からの忘新年会時期も、秋頃の落ち着きから一変した感染急拡大で外食すること自体に強い警鐘が鳴らされ、それどころか“ステイホーム”の大号令で年末年始の帰省すら控えるよう連呼されたほどだ。
　国内で新型コロナに対し脅威の目が向けられるようになったのは２０２０年１月頃からだが、それからおよそ１年の間。ゴールデンウィークも、さっぽろ大通ビアガーデンの中止に象徴される夏の需要期も、飲食事業者は書き入れ時を悉くコロナで潰されてきた。そうした苦しさを経て秋、ＧＯ ＴＯトラベルキャンペーンに代表される旅行需要も動き始めるまでに経済の活気が戻り始め、飲食事業者としてはその後の忘新年会シーズン到来を大きな期待と共に待ち望んでいたことだろう。それだけにこの繁忙期まで奪われたショックは計り知れない。
　すすきのご当地ビール「すすきのえーる」の事業が動き出したのはその頃だった。プロジェクトリーダーを務めるのは、同地域をメインに約30店舗を運営するＡＰＲグループ（本社札幌）の役員で、関連会社ＡＰＲ ＴＲＡＤＩＮＧ（本社同）の代表を務める青木康明氏。チームメンバーにバー形態の店舗を主に展開し、現在は動画配信サービスのＹｏｕＴｕｂｅですすきのの今などを伝える公式チャンネル・エスチューブ～すすきの村～も運営しているｅｓエンターテイメント（本社同）の鈴木慎也代表。広告代理店業兼、シンガーのＨＡＭＢＵＲＧＥＲ ＢＯＹＳや金子智也なども所属している芸能事務所トリプルワン（本社同）の伊藤翔太代表が参加している。
「すすきのえーる」の事業内容を紹介するホームページには、その着手に至る５つのきっかけが記載されている。
■「すすきの」という表現がネガティブ要素の代表例で使用されることが多く感じたので悔しかった。
■すすきの×ＹＥＬＬ（応援）＝すすきのえーる（ＡＬＥ、上面発酵ビールの意）として、すすきのの街に応援の声を集めたかった。
■この「すすきの」で先が見えない中、共に闘っている全ての人に、伝えたい思い。【すすきのは終わらない】
■終息した際には、すすきのに来てここでしか飲めない生の「すすきのえーる」で乾杯しようというメッセージ！
■日本一長い影響を受けている「すすきの」の私達がチャレンジするからこそ、伝えられることもあるはず。
　こういった思いのもと、クラウドファンディングで活動資金を募集。20年12月26日の締め切りまで、目標額に設定した１００万円を大幅に上回る３００万円強が集まった。