Agri Report ──羽幌発「株式会社焼尻めん羊牧場」の挑戦
還暦を過ぎて羊飼いになった男
小さな島は「地方創生の最前線」

2025年01月号

海を見下ろす高台で潮風を浴びた草を食んで育つサフォーク種の羊たち
※掲載写真は全て焼尻めん羊牧場と羽幌町役場の提供

民間の力で羽幌の地域資源を再生へ

還暦を過ぎてから離島の羊飼いになった男がいる。留萌管内の羽幌町が長年運営してきた「焼尻めん羊牧場」を昨年に引き継いだ東郷啓祐さん(62)、その人だ。今では1カ月に1、2度のペースで札幌を離れて焼尻島に渡り、1週間ほど羊たちに囲まれた生活を送る。これまで中小企業のM&Aなどを手掛けてきた東郷さんが羊飼いになったのは偶然の産物。東郷さんの仲介で焼尻めん羊牧場の承継を検討していた人物が突然手を引き、選択を迫られる中で出した答えが自分で牧場を引き受けることだった。当時、東郷さんの背中を押したのは肌で感じた「焼尻めん羊まつり」の活気。「この賑わいは残す価値がある」──直感的にそう思った東郷さんの新たな挑戦が、そこから始まった。小さな島における地方創生の大きな取り組みをレポートする。

(11月14日取材 工藤年泰・佐久間康介)

M&A専業からやむなく転身
「あべ養鶏場」の再生に道筋


 牧場名をそのまま会社の名前にした「株式会社焼尻めん羊牧場」の代表取締役を務める東郷さんは、札幌に置く支店で取材に応じた。還暦を過ぎたとは思えない若々しさ、そして等身大の語り口が親しみを感じさせてくれる。
 1962年12月、士別市で生まれた東郷さんは、親の転居に伴い道内各地を転々とした。高校時代は東北の仙台で過ごしたが、学校が肌に合わず中退。「それもあって、私の学歴は中卒どまりなんです」と、あけすけに語る。
 その後、上京して上野の機械メーカーに務め、当時流行っていたインベーダーゲームなどアーケードゲームの基板製作に携わってきた。そこで得た知識と技能を基に独立。ひとりで基板の組み立てや販売を行ない事業のイロハを学んだ。
 札幌に戻り、M&Aの会社を興して数々の仲介を手掛けてきたが、ある時、札幌の飲食事業者から下川町のあべ養鶏場の売却先を探してほしいという依頼が舞い込む。
 その飲食事業者は、原料調達先をグループ化することによって差別化を図ろうと、あべ養鶏場を子会社にしたが、IPO(新規株式公開)の関係から手放すことにしたためだ。東郷さんは売却先を探したものの、なかなか見つからなかった。売却の期限が近づいたことから一旦、東郷さんがその会社を預かることにした。
 それは2020年初めのことだった。時間をかけて売却先を探そうと思っていた矢先、瞬く間に全道、全国でコロナ禍が広がり、売却環境は一変した。

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スタッフが夏場に寝泊まりするログハウス。冬場の寒さには耐えられず住環境の改善が課題になっている

焼尻めん羊牧場の全景(町営時代に撮影)

羊舎内の様子。ここで羊たちは冬を過ごす

島には外敵がおらずストレスフリーの飼育環境が肉質にも好影響を与えている

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