告発・陸の蟹工船<7>
「原告主張は誹謗・中傷」

2024年10月号

直近の法廷では、牧場主の「職親」登録(知的障害者福祉法16条)がなかった事実なども確認された(9月4日午後、札幌市内)

恵庭牧場、市が虐待認識を否定
裁判所は手話通訳に公費認めず


恵庭市の牧場で持ち上がった、長期間に及ぶ障碍者虐待疑惑。被害当事者たちが起こした損害賠償請求裁判は、提訴から丸1年を経て5回めの口頭弁論を迎えた。早期に被害を把握していたことが疑われる被告の自治体は今回、改めてこれを否定し、原告側の批判を「誹謗・中傷」とまで言い募ることに。元市議への忖度も含め、飽くまで行政に責任はないとの主張は、2年めを迎えても変わらないようだ。

取材・文=小笠原 淳

事業所報告「憶測」と市


「長い書面の割には、まともに回答していない印象ですね」
 中島哲弁護士(札幌弁護士会)は苦笑する。昨年8月下旬に提起した損害賠償請求裁判が5回めの口頭弁論を終えた直後、支援者らを前にした報告集会での一齣だ。
 9月4日午後、札幌地方裁判所提訴から1年あまりが過ぎたその裁判は、知的障碍のある男性3人が恵庭市郊外の牧場で過酷な労働を強いられ続け、その上で年金を詐取されていたとして牧場関係者と地元自治体とに損害賠償を求めて起こしたものだ。この日の法廷では被告の恵庭市が虐待の認識を改めて否定し、同市内の相談支援事業所の記録や原告側の隠蔽疑い主張などをことごとく批判、虐待の事実は確認できなかったと繰り返し強調することになった。
 前回の弁論で原告側は、市が2016年に行なった当事者男性らへの聴き取りにより「廃棄する野菜や野草、人が食べない果実」や「腐った野菜」などを食べていた事実などを把握しつつ、その状況を放置し続けたと指摘している(本誌前々号既報)。被告の恵庭市は今回、これらの批判に「いずれの事実も真実か否か不明だった」と反論、市として虐待疑いを把握していなかったと改めて主張した。ひいては、虐待疑い事案として扱わないことの不合理性を指摘する原告の主張に「なぜ不合理なのか不明」と疑義を呈し、「原告らの主張は結論ありき」と批判した。

手話通訳の公費負担が認められなかった結果に、原告側は「今後も尋問や判決言い渡しなどの重要な節目に申し入れを続けたい」(原告代理人が地元障碍者団体と連名で裁判所に提出した8月8日付『要望書』)

手話通訳の公費負担が認められなかった結果に、原告側は「今後も尋問や判決言い渡しなどの重要な節目に申し入れを続けたい」(原告代理人が地元障碍者団体と連名で裁判所に提出した8月8日付『要望書』)

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