首相批判封殺の波紋㉙
「半分勝訴」確定

2024年10月号

判決確定を受け「終わったこと自体はよかった。これからは静かに暮らしたい」と大杉雅栄さん
(8月20日午後、札幌市内)

野次排除事件から丸5年
国賠上告を最高裁が棄却


結論は、唐突だった。発生5年を過ぎた直後に伝わった「上告棄却・不受理」の報。1年2カ月前の控訴審判決を追認するその決定は、当事者らが使う言い回しの通り「半分」意義のあるものには違いない。2019年夏に札幌で起きた首相演説野次排除事件は、司法判断が確定することで一つの節目を迎えた。無論、即ち「終わったこと」になるわけではない。本稿もまた、飽くまで現時点での報告という位置づけだ。

取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。55歳


最高裁、二審判決を維持 「モヤモヤ残る」と当事者


「それほど意外性はなかった」と語るのは、その国家賠償請求訴訟で1人めの一審原告となった男性。2019年7月に「安倍やめろ」の一声で地元の警察官に身体を掴まれ、選挙演説の現場から“排除”された札幌市の大杉雅栄さん(36)が、自身の起こした裁判の上告棄却・不受理の報に接した際の一言だ。
「争いを通じてずっと言ってきたのは『野次は表現の自由で認められていて、不当に排除できない。選挙妨害にもあたらない』という主張。裁判ではこれが全体として認められたので、ぼくの部分で敗けたとしてもそれを『別のこと』として切り離す必要はないかな、と」
 大杉さんらが札幌市内で緊急記者会見を設けたのは、8月20日午後のこと。この前日、最高裁判所第一小法廷(深山(みやま)卓也裁判長)が野次排除事件国賠で当事者らの上告を退け、昨年6月の控訴審判決が確定したところだった。
 裁判のもう1人の一審原告・桃井希生(きお)さん(29)は、同じ会見の席で「1人だけ排除違法が認められても複雑な思い」と打ち明けている。いかにも、警察による言論の自由侵害をめぐるその争いは当初、訴えを起こした2人の主張をほぼ全面的に認める結論が得られた筈だった(札幌地裁・廣瀬孝裁判長)。だが一審被告の北海道警察がこれに不服を申し立てたことで争いは控訴審に移り、その結果、裁判所は2人のうち1人の主張を退ける「半分勝訴」、即ち一部逆転敗訴判決を言い渡すに到った(札幌高裁・大竹優子裁判長)。
「増税反対」などと叫んだ桃井さんを排除し、また長時間つきまとった警察官らの行為を違法と断じつつ、同じ現場で「安倍やめろ」と叫んだ大杉さんを排除した対応については違法性を認めなかった二審判決。当事者双方がこれに上告してから1年2カ月が過ぎて伝わった結論は、すでに述べた通り。半分勝訴・半分敗訴の高裁判決が、ごく短い決定文であっさり確定した。

5年に及ぶ争いが〝三くだり半〟であっさり決着した(8月19日付 大杉さん事件の最高裁判所決定)

最高裁決定を受けた当事者のコメントなどは「ヤジポイ」公式サイトから閲覧可能(https://
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控訴審で「非常識な事実認定」を手がけた大竹優子裁判長(当時)は判決の直後、札幌家裁所長に〝栄転〟している(札幌家庭裁判所公式サイトから)

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