狩人、銃を奪われる⑧
「公益活動に安心を」

2024年08月号

「そのうち札幌の大通公園にもヒグマが出てくる可能性がある」と、一刻も速い判決言い渡しを求めた池上治男さん=中央(7月5日午前、札幌市中央区の札幌高等裁判所前)

銃所持許可訴訟、10月判決へ
町と決裂の猟友会は独自調査


苦笑混じりに漏れた一言は「とにかく長かった」。地元自治体の要請でヒグマを駆除し、法令違反に問われて猟銃を差し押さえられたハンターは、道公安委員会を訴えた裁判を4年間にわたって争い続けなくてはならなかった。銃所持許可取り消しの決定時から数えると、足かけ7年の闘い。命がけの公益活動の担い手を犯罪者扱いする処分が正当化されては、誰も銃を撃てなくなる――。各地のハンターが注目する判決は、10月中旬に言い渡される。

取材・文=小笠原 淳

平面図根拠に猟銃を押収


 6年前の出来事に端を発した裁判が実質的な審理を終えた日、銃を持たないハンターが最後の意見陳述に臨んだ。
「ずいぶん長くかかったな…。それが率直な気持ちです」
 7月5日午前。札幌高等裁判所(小河原寧裁判長)の証言台でそう切り出したのは、北海道猟友会砂川支部長を務める池上治男さん(75)。「長くかかった」争いのいきさつを、その法廷でこう振り返った。
「私が砂川市の要請を受けてヒグマを駆除したのは、平成30(2018)年8月のことです。ライフル銃を仮領置されたのは、平成31年1月でした。一審判決が下されてからも、早くも2年半が経過しました。所持許可を取り消されて以来5年半もの間、私は銃をすべて取り上げられたままです」
 本誌など地元報道が繰り返し伝えてきた、猟銃所持許可取り消し事件。砂川市の求めでヒグマの目撃現場に駈けつけ、警察官立ち会いの下でクマを駆除した池上さんは、その2カ月後に突然、鳥獣保護法違反などの容疑をかけられる(のち不起訴)。翌年、北海道公安委員会が銃所持許可を取り消した理由は「建物の方に向かって撃った」ため。駆除現場には高さ約8メートルの土手があり、池上さんのライフル弾はその土手を背にして立ち上がったクマに向けて発射されている。ところが地元警察は現場の高低差を無視した平面図を根拠に、土手の上に建つ民家に射線が向かっていたと論を張り、公安委もこれを鵜呑みにしてしまった。
 猟友会周辺に動揺が走ったのも、むべなるかな。公益目的の駆除に協力して犯罪者扱いされるとなれば、誰も引き金を引けなくなる。「これは私だけの問題ではない」と、池上さんは公安委処分に行政不服審査を申し立てたが、一方当事者の公安委により20年4月に請求棄却が決定。この時点で、駆除当時から2年ほどが過ぎていた。

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ヒグマ駆除裁判で逆転判決
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銃所持訴訟では、一審に続き二審の札幌高裁でも異例の「検証」が行なわれている=中央に佐久間健吉裁判長(当時)、右隣りに池上さん(昨年9月7日午後、砂川市宮城の沢)

有害鳥獣対策は北海道猟友会の総会でも大きな話題となり、複数の参加者から発言があった(6月10日午後、札幌市中央区)

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