10年以上、手付かずのままの旧「勤医協中央病院」
(札幌市東区)
札幌市内では、1972年の札幌冬季五輪で街並みが大きく変わったが、当時建設された多くのビルが更新の時期を迎え、再び街並みが変わり始めている。その頃に建った病院も同様に建て替え時期に入っており、移転新築された新病院が市内随所で目に付くようになった。その一方で、解体されることなく当時の姿を留めたままの旧病院もある。今回は、そんな旧病院の動向を探ってみた。
(佐久間康介)
公益社団法人北海道勤労者医療協会(札幌市白石区)が運営する「勤医協中央病院」は、2013年5月1日に東区東苗穂5条1丁目に新築移転した。1975年に開院した旧病院(東区伏古10条2丁目)は、増築を重ねて316床の総合病院になっていたが、老朽化のため08年に旧病院から東に約700メートル離れた旧学校用地を取得。新病院を13年4月に竣工させた。
新病院のオープンから10年を経た今も旧病院はまだ以前のまま。旧病院の近くには「勤医協伏古10条クリニック」や医療法人北海道勤労者歯科医療協会(札幌市西区)が運営する「ふしこ歯科診療所」があり、旧病院の駐車場は、こうした医療機関の駐車場として利用されているほか、新病院を結ぶ無料巡回バスの停留所も旧病院の正面玄関前にある。
旧病院の敷地は約9千平方メートルで所有権は北海道勤労者医療協会。抵当権は2010年頃に全て抹消されている。今後の活用について勤医協中央病院は、「時期は未定だが、法人内部で活用する方法も検討している」と答えている。
消化器系のがん治療で有名な社会医療法人恵佑会(札幌市白石区)は、19年春から白石区本通9丁目南で「恵佑会札幌病院」(229床)の移転新築工事を進め、21年8月に新病院を開業させた。新病院の土地は元々NTT東日本が所有していたが、住友不動産を経由して14年に恵佑会が取得していた。
新病院開院から2年半が経過したが、国道12号線沿いの白石区本通14丁目にある旧病院は、そのままの状態。旧病院は1981年3月に開院、6期に亘る増築工事を行ない12年3月には本通13丁目に「恵佑会第2病院」(135床)を開院している。旧病院の敷地面積は約6千平方メートルとみられるが、恵佑会の関係者は「どうするかは未定だが、良い話があれば(売却も)検討したい」と話す。旧病院の正面玄関近くには白石神社の「大燈篭」が建っており、病院の目印にもなっていた。