北海道知事 鈴木 直道氏
ロシアのウクライナ侵略に加え中東でも戦火が広がるなど世界情勢が混迷を深める中、新型コロナの5類移行で観光など人の行き来が回復し始めたことで、安堵感が広がりつつある北海道。2023年には、望まれていた次世代半導体製造工場の建設が千歳市で始まるという明るい話題もあったが、人口減少、少子高齢化といった構造的課題や、エネルギーや食料品の高騰など道民の暮らしに関しては不安材料がいまだ山積みだ。その北海道の舵取り役である鈴木知事に、この1年の振り返りや道立看護学院のパワハラ問題の扱い、北海道活性化に向けたこれからの道筋などを訊いた。
(11月30日収録・聞き手=工藤年泰)
──2023年を振り返って、ご自身の感慨はいかがですか。
鈴木 一番印象深いこととしては、やはり新型コロナウイルス感染症の5類への移行です。3年以上の長きにわたって皆様に大変ご協力を頂いてきた中で迎えられたこの節目は、とても大きな出来事と受け止めています。これまでの感染対策は医療従事者様、事業者様はじめ道民の皆様に多大なるお力添えを頂きながら講じてきましたので、皆様にはあらためて心から感謝を申し上げたい。
この2023年は非常にさまざまなことがありましたが、ひとつは道民の皆様の暮らしに大きな影響が及んだ1年だったと思います。不安定な国際情勢などを背景とした物価高騰と、その長期化。中国などによる道産水産物の輸入規制。さらには、道内最大規模となった高病原性鳥インフルエンザの感染による養鶏場での防疫対応などがありました。
一方で道民の皆様と進めてきた取り組みにも動きがありました。4月に開催されたG7札幌気候・エネルギー・環境大臣会合では国内外の皆様に、気候・エネルギー・環境に関する北海道の取り組みを発信することができました。エネルギー関連では道内の5区域が洋上風力の有望な区域として一気に選定され、発電事業の実施に向けた新たな一歩を踏み出すことができました。
──ラピダス社の千歳進出も大きな出来事でしたね。
鈴木 国策とも言える次世代半導体製造拠点の整備が、ここ北海道で始まった意義は非常に大きいと考えています。政府による2023年度の事業計画の承認と追加の支援をはじめ、先日(11月29日)には半導体関連産業に関する補正予算が決まるなど、プロジェクトは着実に前進しています。
データセンターといったデジタルインフラの整備について、私たちは北海道こそ、東京や大阪という集積地を補完、代替する役割を担えると主張してきました。この主張を裏付けるように、近年は本道と九州がそれを果たす地域として位置付けられるようになりました。こういった流れをさらに確実なものにしていかねばなりません。
──天皇皇后両陛下が来道され、全国豊かな海づくり大会が38年ぶりに北海道で開催された年でもありました。
鈴木 9月に厚岸町と釧路市で開催された全国豊かな海づくり大会北海道大会で、天皇皇后両陛下に御臨席いただくことができました。