告発・絶望の学府⑯
第三者委 新たに設置か

2022年08月号

亡くなった学生の実家には、看護実習の制服が今も遺されている(後志管内)

江差看護・パワハラ死解明へ 卒業生らは学生間いじめ否定

新たな被害調査が求められている北海道立高等看護学院のパワーハラスメント問題で、道が昨年設けた第三者調査委員会とは別のメンバーによる調査チームが発足する可能性が浮上した。教員によるパワハラを苦に自殺したとみられる在学生の事案で、遺族の申し入れを受けた道が設置の検討を進めているという。同事案では事情を知る卒業生らも証言に名乗りを挙げており、一連のパワハラ問題で最悪の被害にようやく真相解明のメスが入り始めた

取材・文=小笠原 淳

事件後「調べるな」と教員


 本誌前号まで既報の通り、北海道立江差高等看護学院に在学していた男子学生(当時22)が自ら命を絶ったのは、2019年9月。のちに表面化した教員によるパワーハラスメントとの因果関係は、この時点では疑われていない。複数の被害告発を受けて昨年発足した道の第三者調査委員会も、死亡事案そのものは事実として認めつつ、同件でのハラスメント認定は見送った。
 亡くなった学生の遺族が被害を訴え始めたのは昨年暮れになってからだが、事件当時をよく知る元同級生らは当初から同学生のハラスメント被害を確信していた。その1人が語るのは、たとえば次のような目撃談。
「亡くなったのは実習が始まって2日めの朝でした。彼はその前日に提出用の資料をまとめていたんですが、プリンターが壊れて印刷できなかった。学校の複合機は使わせて貰えない決まりで、コンビニのコピー機も『個人情報が漏れる』という理由で使用禁止。それで結局、資料を提出できなかったんです」
 本人を待っていたのは、担当教員の激しい叱責だったという。
「実習担当の教員が『機械が壊れることを予見して印刷しなさい!』って、すごい勢いで怒ってました。

事件の第一発見者となった教員らは看護師資格を持つが、真っ先に救急通報せず、まず職場に、次いで警察に連絡、ついに119 番は鳴らさなかった
(北海道が開示した事故対応記録)=一部墨塗り処理は道

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