緊急寄稿【3】いま、ウイグルの声に耳を
虐げられる子どもと女性
〝中国化教育〟を受けるウイグルの子どもたち(写真はいずれもトゥール・ムハメット氏提供)
IUD挿入の強制避妊で人口抑制
1994年に訪日し、現在人権活動家として中国共産党の犯罪を告発し続けている日本ウイグル連盟会長、トゥール・ムハメット氏の緊急寄稿、第3弾をお届けする。国際社会から非難を受けている新疆ウイグル自治区にけるジェノサイドとはどのようなものか。今回は、虐げられる子どもと女性がテーマだ。日本は、いつまでこの問題に及び腰を続けるのか──。
トゥール・ムハメット(日本ウイグル連盟会長)
(トゥール・ムハメット)1963年東トルキスタン(中国・新疆ウイグル自治区)ボルタラ市生まれ。北京農業大学(現在の中国農業大学)卒業後、85年から94年まで新疆農業大学で講師を務める。94年に訪日し九州大学に留学。留学中に中国で秘密扱いになっている天安門事件(89年)を知り、97年に新疆で起きた中国によるウイグル人弾圧事件を契機に人権活動家として歩み始める。2015年日本ウイグル連盟会長に就任。新疆にいる娘と連絡が取れない状態にある。農学博士。58歳
子どもたちが受ける仕打ち
湖北省の工場で強制労働中のウイグル人女性
湖北省の工場で強制労働中のウイグル人女性
奪い取られた子供を産む権利
筆者は、現在オランダに亡命中のケルビヌル・スィディクさんにオンラインでインタビューし、中国政府がウイグル人女性に対して実施している避妊措置の状況を尋ねたことがあります。
ケルビヌルさんによると、2017年にウイグルから脱出するまで、彼女はこの措置に従っていました。亡命時に50歳を過ぎていた彼女は元々政府の出産制限を遵守し、ひとりの子供しか出産しませんでした。それなのに、です。
「ウイグルでは、政府の要求に応じず抵抗し続けるなら警察当局が介入し、罰金刑や実刑を受けることになっています」(ケルビヌルさん)
抵抗しようもなく彼女は公立病院に行き、そこで医師は金属製の鉗子を使って子宮内避妊器具(IUD)を挿入し、彼女が妊娠出来ないようにしてしまいした。彼女はその手術の最中、ずっと泣き続けていたといいます。
「私は、もはや普通の女性ではないように感じます。とても大切なものを突然泥棒に盗まれたような失望感です」と、彼女は電話口で涙を流しながら私に悔しい気持ちを伝えていました。
中国本土では、当局は人口の少子高齢化によって引き起こされる社会問題による危機を回避しようとしているため、従来の「ひとりっ子政策」を転換し、現在は女性に多くの子供を産むことを奨励しています。
しかし、東トルキスタンにおいては真逆です。そこでは、ウイグル人に対する支配強化と人口抑止が同時に進められています。この措置が。強制的に避妊を推し進めることにより数世代に影響を与え、ウイグル族の人口動態を変えようとする試みであることは容易に推測されるところです。
このような政策=強制的な避妊措置の増加に伴い、ウイグル人の出生率は近年急激に低下しています。最近、ドイツ人研究者エイドリアン・ゼンツ博士がこの事実を公表し、世界に衝撃を与えているところです。
中国当局は、政府による強制避妊を「ウイグル人の自発的行動」として世界に説明します。しかし、我々ウイグル人は、実際にそのような扱いを受けていることを身をもって国際社会に証言しています。実際のところ、ウイグルの女性達はIUDの使用を強制されています。そして、手術後に自宅で回復している時でさえ、中国当局は、彼女やその家族が政府に対し不満の兆候を持っているかどうかを観察するため共産党員や役人を派遣し、家族と一緒に暮らすようにしています。
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