地元紙・80年めの迷走
どうする、道新

2021年09月号

自覚の有無にかかわらず、道内最大の報道機関は今、大きな岐路に立たされている(札幌市中央区の北海道新聞本社)

記者逮捕で内部の不信加速。7月には五輪批判記事削除

6月下旬に起きた新人記者逮捕事件以降、北海道新聞社内で上層部への不信の声が止まらない。事後の読者説明には外部からも批判が相継ぐ中、社の公式な見解は報告記事の掲載を最後に1カ月近くも途絶えたまま。本社内では節度を欠いた宴会が原因とみられるクラスターが発生、さらには自社のかかわる事業に水を差す記事を電子版から削除する“事件”も起こり、折からの迷走に拍車がかかっている。創刊80年を控える地元ブロック紙は今、どこへ向かっているのか。(取材・文 小笠原 淳)
 

事件後、再び沈黙1カ月。報告「非常に問題」指摘も

 
 記者逮捕事件が起きた直後の北海道新聞の迷走ぶりは、すでに本誌前号の誌面で報告した。同社が読者報告記事を通じて事件の経緯や社の対応などを外部に説明したのは、事件から2週間が過ぎた7月7日。以後は再び長い沈黙に入り、1カ月が過ぎた本稿締め切り時点で新たな報告などが発信される兆しはない。
 事件が起きたのは、本年6月22日午後のこと。旭川医科大学で同日の学長選考会議を取材していた道新旭川支社報道部の新人記者が、同大の会議室近くに“侵入”したとして大学関係者に現行犯逮捕され(常人逮捕)、およそ48時間にわたって地元の旭川東警察署に身柄を拘束された。報道各社が同記者を匿名表記して事件を報じる中、道新のみは自社の紙面で「容疑者」の実名を発信、一時的に閲覧可能となっていた電子版の配信記事などを通じてその氏名を“拡散”させることになる。
 取材を指示した社の責任が問われず、業務で現場に赴いただけの新人が晒し者になったことで、現場の記者からは疑問の声が相継いだ。若手などから会社批判の訴えを受けた道新労働組合が事件2日後に社へ「要望書」を寄せ、社員の不安を解消するよう申し入れた経緯は、前号で報告した通り。所属を越えた女性記者らの集まり「メディアで働く女性ネットワーク(WiMN)」など外部のメディア関連団体が旭医大と旭川東署による逮捕・捜査への抗議声明を発した動きも、すでに報じた。
 そうした外部からの檄は、大学や警察への抗議に留まらない。道新労組の申し入れと同様、現場の記者たちの不信感を代弁することになったのは、同労組も加盟する日本新聞労働組合連合(新聞労連)。同連合が6月29日付で道新に寄せた『意見書』の一節を、左に。
《当該記者の逮捕・身柄拘束に至った経緯が詳しく解明されない中で、その状況に乗じた世論形成がなされ、当該記者へのバッシングを危惧します》《貴社は当該記者の心身を守り支えるため、あらゆる手を尽くすべきです》
 

労組のアンケートには、現場の率直な思いが反映されることに

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事件2週間後の読者報告は、会員登録を経ないと閲覧できない状態

言論の自由には例外があったらしい(7月29日付 北海道新聞朝刊)※画像の一部加工は本誌

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