我汝会えにわ病院が道内で初導入 手術支援ロボット「Mako」の実力
医師による手術を正確に支え安全な人工関節置換術を実現

2021年11月号

導入した「Mako」のロボティックアームを手にする木村理事長

Medical Report

整形外科分野の手術支援ロボットとしてアメリカで開発された「Mako(メイコー)」が注目されている。術前のCT画像のデータから組み立てた治療計画に基づきロボットアームの補助を受けて手術するもので、道内では昨年、医療法人社団我汝会(木村正一理事長)が運営する「えにわ病院」(150床)が初めて導入。人工膝関節置換術などで高い効果を上げている。「この手術支援ロボットを使えば、熟練者だけではなく経験の少ない医師でも安全かつ正確に治療することができる」と話す木村理事長にMako の可能性などを訊いた。
(9月29日取材)

変形性膝関節症のレントゲン写真(正面と側面)

人工膝関節全置換術を施した後(正面と側面)

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進化した人工関節置換術


 我が国の手術支援ロボットをめぐっては、消化器外科や泌尿器科、産婦人科領域でのがんや循環器疾患の内視鏡手術をサポートする「ダヴインチ」が一定の普及を見せているが、整形外科分野では19年6月に「Mako」による股関節と膝関節の人工関節全置換術が保険適用され、この手術支援ロボットを導入する医療機関が少しずつ増えている。
 米国で開発されたこのMakoは、すでに欧米やアジア諸国で約45万症例の治療実績があり、現在日本では整形外科を標榜する医療機関約30施設で稼働。この中で道内では、人工関節置換術で有名な我汝会えにわ病院が昨年6月に初めて導入した。
 同病院は年間2500症例以上行なう整形外科手術のうち、昨年は人工股関節置換術で415症例、人工膝関節置換術で520症例を手掛けるなど全国でも屈指の実績を誇る。
 股関節や膝関節は体重を支えて立つ、歩く、しゃがむなど生活する上で必要な動作を司る大切な部分。これらに問題が生じ軟骨がすり減ってくると、歩く時などに痛みが出て日常生活が不便になる。さらに症状が悪化すると太もも側の骨とすね側の骨がぶつかり合い、生活に支障が出るほどの痛みを生じる。
 このような変形性膝関節症・股関節症のほか重度な関節リウマチにおいて、薬物療法やリハビリを続けても症状が改善しない場合は、股関節や膝の人工関節置換術を行なうことになる。これまでの置換術では、傷んだ関節表面の骨と軟骨を手術器具のカッティングブロックという型に合わせて切り取り、人工関節を軟骨の代わりに挿入して固定していた。ただ、この手術は医師の経験に頼る部分が大きく、骨を削る位置が不正確だと痛みが残ったり早期にゆるみを生じるなどのリスクがあった。
 これに対してMakoの支援を受けた手術では、ロボティックアーム(機械の腕)を医師が操作し、傷んだ骨を切除した場所に人工関節を設置する。大きな特徴は術前にCTで撮影した骨格のデータをコンピュータ処理し、3Dで可視化することだ。そのデータを元に人工関節のサイズや設置する位置、骨を切除する箇所や量などを決める手術計画を作成。膝関節であれば手術中にO脚やX脚などの変形を矯正し、適切な人工関節の位置を3D画像で確認し調整を行なう。
 近年はCT検査で得られた豊富なデータに基づき、赤外線モニタで患部を正確に計測しながら行なう「ナビゲーション手術」が広がっているが、Makoでは先述のように、より精緻なナビシステムの下で実施されるのが特色だ。
「医師はロボティックアームを手に持ち、Makoに従い先端に取り付けられたデバイスを操作して骨を切除しますが、この時に治療計画から外れた角度や深さで骨を切除しようとするとロックがかかり動きを制御してくれます。しかもMakoは、通常の手術のカッティングブロックを用いずにダイレクトに1ミリ単位で骨を切ることが可能。骨の切断面がとてもきれいで凹凸がないので、人工関節もピタッと設置することができます。従来の手術では医師の経験に負う所が多いのですが、Makoを使えば経験の少ない医師でも安全かつ正確に手術することができます」(木村正一理事長)
 

えにわ病院でのMako による人工関節置換術の様子

(きむら・しょういち)1960年新潟県出身。88年旭川医大卒業、89年北大整形外科入局。函館中央病院、美唄労災病院などを経て2001年4月えにわ病院に勤務。05年整形外科部長、11年理事を経て17年1月に医療法人社団我汝会理事長に就任。医学博士、日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医

えにわ病院でのMako による人工関節置換術の様子

変形性膝関節症のレントゲン写真(正面と側面)

人工膝関節全置換術を施した後(正面と側面)

(きむら・しょういち)1960年新潟県出身。88年旭川医大卒業、89年北大整形外科入局。函館中央病院、美唄労災病院などを経て2001年4月えにわ病院に勤務。05年整形外科部長、11年理事を経て17年1月に医療法人社団我汝会理事長に就任。医学博士、日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医

 
ヒューマンエラーを回避


 最先端医療機器であるMakoの臨床での使用は、海外の実績ある医師や国内の指導医の元での訓練が義務付けられているが、えにわ病院では有資格者を6人揃え、今のところMakoによる人工膝関節置換術は主に木村理事長と田中大介医師の2人が行なっている。
 昨年6月の導入以来、同病院ではMakoによる人工膝関節置換術を約250症例手がけているが、このうち20症例は人工膝関節片側置換術だった。膝関節全体を人工の関節に置き換える全置換に対して、「片側置換」は膝の内側や外側など傷んでいる側だけを人工関節に置き換えるもので、初期の変形性関節症に多い。膝の内側のみが痛んでいる患者に有効な手術である。
「片側置換術は全置換術に比べて、膝にとって重要な靭帯を残せるメリットがあります。ただ、この手術は術者にかなりのテクニックが必要でした。人間が1ミリ単位、1度単位で精度の高い手術をするのは難しく、切る位置や角度が微妙にずれてしまうといったヒューマンエラーが定の頻度で起きるもの。Makoではそういうエラーは皆無と言っていいほど回避できます」(同)
 人工関節の耐久性は20年から30年とされる。そうした事情から手術は最後の手段とも言われており、えにわ病院でもこれまで置換術治療を受けた患者は70代以降の高齢女性が多い。だが木村理事長は、若年層であっても治療法が置換術しかない場合については「手術を行なわないという選択肢はない」と考えている。
「欧米では、QOLを向上させるため若年層でも積極的に人工関節置換術を行なうことが多い。若い時に人工関節にして働き、耐用年数が過ぎたらそこでまた検討するという考え方です。最近、オーストラリアの医師とリモートで話をする機会がありました。若い方が足が痛くて思うように動けない。しかし、いま働けないと困るので人工関節にする。それがなぜ悪いのかというのが医師の考え方でした。人工関節置換術は最後の治療法ではありますが、関節の一部を矯正する骨切り術などをやっても効果がないなら、その選択もやむを得ないと私は考えています」
 この点、Makoなら「片側置換」「全置換」を問わず正確で安全な手術を行なうことができる。計画外の手の動きを制御するため血管・神経・靭帯などの損傷、骨の削り過ぎ、削る角度の誤差を低減するなどのメリットがあるほか、手術時間も手作業と変わりがない。海外のデータでは、術後の痛みが少なく回復に当たっても早く歩けるようになったという報告があり、導入して1年余りのえにわ病院でも、木村理事長は術後に患者の膝がよく曲がるようになったと感じているという。
 よいことづくめのMakoだが、ネックと言えそうなのが手術までの準備期間の長さだ。医療機関では、患者のCT画像のデータをメーカー側に送り解析と治療計画の作成を依頼するが、これが約3週間かかる。このため同病院では、痛みがひどく長くは待てないという患者には従来通りの手術を行なうケースもあったという。
「他の外科領域では地方の医療機関でもダヴィンチの普及が進んでいますが、整形外科にとってコストが高額にもかかわらずロボット技術の保険加算が少ないことがMako導入の壁となっていると感じています。手術支援技術の保険加算が追加されれば、さらに導入に拍車がかかると思います」(木村理事長)
 

患者の朗報となるMako


 我汝会グループは中核のえにわ病院をはじめ、さっぽろ病院(札幌市東区)、あすなろ整形外科(札幌市厚別区)、きたひろしま整形外科(北広島市)の4カ所で構成。この中で現状やさっぽろ病院へのМako導入の予定について木村理事長は次のように語る。
「2017年に理事長に就任した時は順調でしたが、昨年からの新型コロナ禍で地方から訪れる患者が減り、我汝会として運営は厳しさを増しています。当初は、さっぽろ病院にも導入を考えていましたが、今はとにかく感染者を出さないためのコロナ対策を優先させているところです」
 股関節や膝関節の疾患は死に至る病気ではないが、怪我などの場合は早急な対応が必要だ。昨年の今頃は、保健所経由でのPCR検査が難しい状況だったため同病院では突然の怪我などで熱のある患者に対して「等温核酸増幅検査」を実施。PCR検査の簡易版だが同様の精度があり13分ほどで結果が出るので、陰性と判明したら入院させるなど、感染症対策に力を入れてきた。
 その我汝会グループは、この10月から12月にかけては病床再編にも着手する。まず、きたひろしま整形外科の19床を無床にし、10月1日付でさっぽろ病院の病床を50床から69床に増床。さらに、あすなろ整形外科の院長で我汝会の理事を務める長谷川功医師が理事定年を迎えるため、こちらも12月末までに19床をさっぽろ病院に移管する。同院はグループから離れるが、無床の医院として運営を続ける。
 我汝会さっぽろ病院は2007年に北区の整形外科を引き継ぎスタート。10年に東区への新築移転を経て、20年9月に東区のJR苗穂駅北口広場前に新築移転し診療体制の強化を図った。今回の病床の再編は年間の手術件数が1700症例を超すさっぽろ病院の受け入れ態勢を整備するのが狙いだ。
 昨年にMakoを導入し、我汝会として人工関節置換術のクオリティをさらに向上させた木村理事長は、取材の最後に次のように呼びかけた。
「地方には膝や股関節が悪くて歩けない人がまだ大勢いらっしゃいます。私たち我汝会の責務として、そんな患者さんをひとりでも多く助けたい。
 中には経済面で諦めている人がいるようですが、最新のMakoによる手術も高額療養費制度の対象となり、自己負担限度額を超えた分は後で払い戻しを受けることができます。今後の人生のためにも痛みを我慢せず、相談いただければと思います」 


医療法人社団我汝会 えにわ病院
恵庭市黄金中央2丁目1-1(JR恵庭駅東口前)
TEL:0123-33-2333
URL:http://www.eniwa-hosp.com/

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