坂泌尿器科病院を運営する北腎会が 公益性が高い社会医療法人に改組
来春、本院の移転新築工事着工へ 盤石の体制となるソフトとハード
新病院の概要と意気込みを語る坂理事長(脳神経・放射線科クリニック内の理事長室で)
さか・たけとし
1948年生まれ。73年札幌医科大学卒業後、同年同大学附属病院泌尿器科学講座入局。79年三樹会病院入職。82年医学博士号取得。87年坂泌尿器科病院開設。98年8月医療法人社団北腎会 坂泌尿器科病院理事長・院長に就任。同年10月坂泌尿器科千歳クリニック開設。2006年医療法人社団北腎会 脳神経・放射線科クリニック開設。日本泌尿器科学会評議員、日本泌尿器科学会専門医・指導医。70歳
Medical Report
昨年12月に開院30年の大きな節目を迎えた坂泌尿器科病院(札幌市北区/40床/坂丈敏理事長・院長)。泌尿器科の個人病院として日本一になる目標を掲げ船出した同院は現在、前立腺肥大症のHoLEP(ホーレップ=前立腺核出術)が2017年実績で約240症例と全国トップとなったほか、前立腺がん関連の患者数で道内一を数えるなど、名実ともに全国屈指の泌尿器科専門病院として確固たる地位を確立している。その同院が組織の社会医療法人化を踏まえ、新築移転という一大事業に乗り出した。医療機関としてソフトとハードを一新する坂理事長に、その狙いと思いを訊いた。(8月24日取材)
開院時の目標を有言実行 日本一のHoLEP実績
──開院から30年という大きな節目を超えましたが、当時から坂理事長はESWL(体外式衝撃波結石破砕術)やTUL(経尿道的尿管結石破砕術)に精通した結石治療の権威として知られていました。
坂 1979年、開院まもない三樹会病院(札幌市白石区)に入職したのがキャリアのスタートです。
入った当初は泌尿器科の一般的な治療を担当していましたが、同病院が東洋で初めてESWL装置を導入することになり、1カ月ほどドイツで施術に関するトレーニングを受け、以降ESWLの専従になりました。内視鏡を使ったTULについても臨床経験を積み、体内で壊した結石をしっかり排出する術も併せて身に付けたという流れです。
ここで約6年勤務し、その2年後に坂泌尿器科病院を開院しました。「泌尿器科の個人病院として日本一になろう」というのが、開院時に掲げた目標でした。
──まさに目標を実現された。
坂 厚生労働省がまとめるDPC集計で、当院は前立腺肥大症のHoLEPの症例数が日本一になりました。2017年の集計で、件数は約240症例。18年はさらに増えるでしょう。また、TULは全国で4位。そして前立腺がん関連の入退院患者数は全道一となっています。昨年12月には、光力学的診断(PDD)による経尿道的膀胱腫瘍切除術を日本で最初に導入しました。
──開業当初から「苦痛の少ない医療の提供」を目指して、先進医療に力を入れてこられた。北腎会の現在の規模・陣容は。
坂 医療施設は現在、札幌市北区の坂泌尿器科病院と脳神経・放射線科クリニック。そして坂泌尿器科千歳クリニックの3つを展開しており、これらに勤務する医師は私を含めて合計13人。内訳は泌尿器科医8人、麻酔科医2人、循環器科医1人、脳外科医1人、放射線科医1人です。法人全体の職員数は100人以上になっています。
新病院の移転地はJR 琴似駅からも歩いてすぐの好立地
前立腺がんなどの治療拠点となっている脳神経・放射線科クリニック
新病院の移転地はJR 琴似駅からも歩いてすぐの好立地
前立腺がんなどの治療拠点となっている脳神経・放射線科クリニック
従来の地域医療への貢献が社会医療法人の移行に帰結
──その体制で近く社会医療法人へ生まれ変わるわけですね。改組の時期や決断された理由は。
坂 認可が下りるのは9月初旬と聞いています。ご承知のように、社会医療法人は固定資産税や不動産取得税が非課税になるといった優遇税制の適用が受けられるメリットがある反面、監査が必要で、内部統制の強化も求められるようになります。
このような中で、私たちはかねてから地域に根差した取り組みに力を入れてきました。地域間の病病(病院同士の)連携・病診(病院と診療所の)連携が進み、当院に北海道中から難しい症例が集まっているという現状もあります。昨年8月からは泌尿器科が充足していないまちへの出張外来も始めたところです。
──それらのまちは。
坂 新篠津村(石狩管内)と夕張市(空知管内)です。自治体が支援する地元の医療機関に、週1回のペースで当院の医師が交代で出向しています。その際に疾患が見つかって当院で手術するというケースもよくあります。疾患は、結石関連をはじめ前立腺がんや膀胱がんなど多岐にわたります。
こういった公益性の高い医療活動を現在進行形で実践していることを踏まえて、社会医療法人へ移行しようと決意したしだいです。
──これまで地域医療に貢献してきた方針が社会医療法人を目指す方向へ自ずと帰結していった。
坂 社会医療法人化によって公益性・公共性をより高めるとともに経営の安定化も図っていきます。今まで以上に地域の皆さんの力になれるよう頑張るつもりです。
療養環境を向上、手術室を増設し施設に保育園も開設
──本院の新築移転の準備も着々と進んでいるようですね。
坂 移転先は札幌市西区八軒1条西4丁目になります。JR琴似駅から徒歩5分ほどの元国家公務員宿舎跡地で、敷地面積は2635坪。道警本部琴似庁舎や農試公園が近くにあって、今は隣接した土地で分譲マンションも建設中です。周辺では新築の住宅建設も進んでおり、今後活気の出そうなとても良い地域です。
──新病院の規模や特徴は。
坂 延床面積約1600坪の3階建てを計画しており、透析は10床増やして40床にする予定です。また、敷地内に職員や地域の方々が利用できる企業主導型保育所を併設します。着工は来年の4月ないし5月。竣工はその1年後の2020年を予定しています。
ハード面で大きく手を入れるのは、なんといっても手術室。既存病院は3室ですが、これを4室にするほか、ESWL専用の手術室も設けます。それぞれの面積は、現状よりかなり広く設計しました。
実は、当院に見学に来るほかの医療機関の医師が増えており、そのような面での対応も考慮し、手術室の大幅拡張を決めたしだいです。
患者さんの病室は4床室と1床室を基本とし、4床室も間仕切りできるような工夫をして、1床室として使えるようにする考えです。
──現在の脳神経・放射線科クリニックもこちらに移す。
坂 ここでは、定位放射線治療装置のノバリスを導入して、前立腺がんなどに対応してきましたが、その治療に切れ目が起きないようタイミングを見計らって、新病院の敷地内に移転させることになるでしょう。
──移転後の現病院施設の利用はどのようにお考えですか。
坂 この地域の患者さんのことも考慮して診療所として残し、サテライトの機能を持たせることを考えています。そうなれば、そこから車で新病院への送迎もできるでしょう。
──一連の事業は、坂理事長の医療人としての集大成ですね。
坂 医療法人を社会医療法人へ改組し、病院を建て替える。いわばソフトとハードを一新させ、体制を盤石にするのが狙いです。医療人として将来に向け良いものを残していきたい。その一心です。
──来たる新病院の開院を楽しみにしています。
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