地域包括ケア「もみじ台モデル」の拠点 ホクノー健康ステーションが11月開業
健康ステーション開設を機に、地域包括ケア「もみじ台モデル」の構築を目指すホクノー・野地秀一社長
1980年代のピーク時には2万8千人を超える住民が暮らしていた札幌市厚別区のもみじ台地域。だが現在は約1万5千人にまで減少し、うち60歳以上が約5割(札幌市のもみじ台地域調査分析業務報告書より)を占めるという、少子高齢化対策待った無しの状況だ。こうした状況下において、避けられない高齢化と真正面から向き合い、住民の“健康寿命”延伸を目指していくことで地域活性化を進めていこうと取り組んでいるのが、同地域に旗艦店を置き厚別区で6店舗を展開する食品スーパーのホクノー(野地秀一社長)だ。同社が目指す健康寿命延伸に向けた地域ぐるみの新規事業が11月6日から始まった。
目指すのは健康寿命の延伸
「MAGOボタン」は1回だけ押すと、その日の天気や暮らしに関する情報などが音声で流れ、2回連続で押すと駆け付け対応を求めているとして、健康ステーションへ即座に連絡が入る
健康ステーションの利用に必要な「ホクノーフレッシュクラブカード」。同社によるともみじ台地域では1万2000枚ほど普及しており、既にほとんどの住民に行き渡っているようだ
地域住民の暮らしを支えるホクノースーパー中央店の店内
「健やか食堂」では、管理栄養士考案によるヘルシーでバランスの取れたメニューを提供
「健やか食堂」では、管理栄養士考案によるヘルシーでバランスの取れたメニューを提供
4年ほど前から実施している「まちかどよろず相談会」の様子
ホクノースーパー中央店を中核としたもみじ台ショッピングセンター
地域ぐるみの予防医療
健康ステーションの開設を機に、高齢者の見守りなど生活支援サービスも強化する。
その代表的な取り組みのひとつが、高齢者サポート事業に定評のあるMIKAWAYA21(本社東京)と連携したシニア向けIoTデバイス「MAGOボタン」の導入だ。
この装置は、自宅に設置したボタンを押すだけの簡単操作で、日々の暮らしに欠かせない情報を知らせるほか、体調の急変などいざという時には健康ステーションのスタッフが駆け付け対応もする、遠隔見守りサービス。設置もACアダプターでコンセントと本体をつなぐだけで、ネット回線を新たに導入するといった面倒な工事をする必要はない。
このボタン設置を希望する50人に無償で貸し出し、実証実験期間までに効果などを検証する。
「MAGOボタンは緊急時の駆け付けのみならず、利用者のさまざまな相談に応じたり便利屋的なサービスも提供する予定ですが、そういったケースでは実証実験の期間中、対応する回数を19回までと制限を設けています」(野地社長)
インターネット地図情報サービス業のマピオン(本社東京)が運営する歩数計スマートフォンアプリ「aruku&(あるくと)」を活用し、歩数に応じてホクノースーパーでの買い物に使えるポイントが貯まるという「健康ポイント」サービスも展開。この取り組みについてもみじ台自治連合会の東健二郎会長は、「住民と同社の双方にとってウィンウィンのサービス」と絶賛している。
「我々自治連合会もかねてより、“健康づくりのために歩きましょう”と住民に呼び掛けてきましたが、同社が展開するサービスは歩くことでお得に買い物できるということですから、健康づくりに楽しさが生まれてくる。地域住民の健康増進にも寄与するこのサービスを我々も歓迎しています」(東会長)
「MAGOボタン」は1回だけ押すと、その日の天気や暮らしに関する情報などが音声で流れ、2回連続で押すと駆け付け対応を求めているとして、健康ステーションへ即座に連絡が入る
健康ステーションの利用に必要な「ホクノーフレッシュクラブカード」。同社によるともみじ台地域では1万2000枚ほど普及しており、既にほとんどの住民に行き渡っているようだ
地域住民の暮らしを支えるホクノースーパー中央店の店内
「健やか食堂」では、管理栄養士考案によるヘルシーでバランスの取れたメニューを提供
「健やか食堂」では、管理栄養士考案によるヘルシーでバランスの取れたメニューを提供
4年ほど前から実施している「まちかどよろず相談会」の様子
ホクノースーパー中央店を中核としたもみじ台ショッピングセンター
地域密着スーパーの使命
今回の健康ステーション開設以前から、同社はもみじ台地域の少子高齢化対策に尽力してきた。4年ほど前からは、地域の世話役や医療・福祉・法律の専門家などが窓口になり、地域住民から寄せられる暮らしの不安や悩みに関する相談に応じる「まちかどよろず相談会」を、月2回のペースで実施。昨年10月には、単身の高齢者でも手軽に健康的な食事を味わえるよう、全国の国立病院で働く管理栄養士が考案したヘルシーメニューを提供する「健やか食堂」も開店した。これまではランチタイムの営業にとどまっていたが、今年10月から1食300円で和食・洋食のいずれかを選べる朝食の提供も新たに始めている。
こういった取り組みに注力する背景にあるのは、食生活をはじめとした地域住民の暮らしを支える地域密着型スーパーとしての使命感だろう。そのホクノーが今後目指していくのが、地域包括ケアの「もみじ台モデル」構築だ。
「介護や医療を地域全体で担うというのが地域包括ケアと認識しているが、早くから医療や介護で公的な補助を受けるというのは、個人や行政、関係機関のいずれにおいても幸福な結果とは言えないでしょう。我々が目指しているのは、地域全体で予防医療に力を入れ、健康に生活できる時間、すなわち健康寿命を延ばすことで、地域活力を高めようとするもの。健康寿命の延伸は医療・介護費用を抑えることにも結び付きます」(野地社長)
こうした同社の取り組みは、全国的にも大きな注目を集めており、11月21日にはテレビ東京系列の経済情報番組「ガイアの夜明け」でも紹介される予定だ。また、地域住民も同社を積極的に後押ししている。
「健康ステーションは今後、もみじ台地域全体の予防医療や福祉活動の拠点となっていくだろう。我々としては、ホクノー単体の事業ではなく地域住民全体で支えていく取り組みと認識している」(前出のもみじ台自治連合会・東会長)
また、この事業に協力している札幌ひばりが丘病院の髙橋大賀理事長兼院長は、「地域住民も巻き込んだ地域包括ケアの取り組みは全国的にも稀で、ほかでも見習うべき」と評価した上で、次のように話した。
「訪問診療などでもみじ台地域の現状を見てきた私達にとっても、“この地域を何とかしなければ”という思いがあった。住民に日頃から健康意識を喚起させる場を、その地域の中心と呼べる場所に整備してくれたことはとてもありがたい。
私達も、健康セミナーへの参加を通じ地元の方々と交流を深め、在宅ケアの在り方などを一緒になって考えていきたい。そして、地域一丸の地域包括ケア構築に取り組むホクノー健康ステーションの事業に、私達も積極的に協力していきたい」
高齢化社会という現実を受け止めた上で、高齢者を元気にするという発想でもみじ台の活性化を目指すホクノー。その取り組みの中で最も肝心な健康寿命延伸について、野地社長は次のように話した。
「健康ステーションでは日々の健康チェックや、気軽に適度な運動ができる場所などを整備し、健やか食堂ではヘルシーでバランスの取れた食事を提供しています。こういったサービスを通じて身体そのものを健康にすることも当然大事ですが、健康寿命延伸には心の健康維持も欠かせないと捉えています。人々が自然と集まりコミュニケーションを深め、心の豊かさが得られる場所としても、ここを活用してもらいたい」
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