道警不祥事から考える〈69〉
被害者は小1女児

2024年04月号

地元警察は職員による児童わいせつ事件を公表せず、当事者の処分も伏せていた
(公文書開示請求により北海道警察が一部開示した一昨年9月21日付『懲戒処分申立書』)

児童わいせつの元警官に求刑3年
不起訴事件「不当」議決で明るみに


現職警官が同居する養女にわいせつな行為を強要し、親族の告発で容疑者として捜査を受けながらも起訴を免がれ、職場である警察本部も報道発表を見合わせた――。事実関係の多くが藪の中だったその不祥事が、発生から2年以上を経て公開の場で裁かれるに到った。第三者機関の「不起訴不当」議決を機に法廷で明かされることになった事件の概要を、発覚までの経緯と併せてここに報告する。小さからず注目されていた筈の裁判の模様は、なぜかどこにも報じられていない。


取材・文 小笠原 淳
1968年小樽市生まれ。地方紙記者を経て2005年からフリー。「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に『見えない不祥事』(リーダーズノート出版)。55歳

養女に、脱衣所で複数回
事件・処分ともに未発表


 全36席の3割ほどが埋まる傍聴席から見て右側、法廷の一部を隠す遮蔽板の奥から男性検察官の無機的な声が響く。
「被告人は、当時養女であった被害者が13歳未満であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、令和3年6月18日ごろから同月25日ごろまでの間…」
 証言台に立つ男性は上下黒のスーツに身を包み、直立不動で声に聴き入っている。体側に下ろした両手の指先がぴんと伸び、まっすぐな背筋は微動だにしない。白いマスクの奥の表情を読み取ることは難しいが、起訴状の朗読が次のくだりに差しかかった時には心中穏やかならぬものがあった筈だ。
「…被告人方脱衣所において、被害者に対し自己の陰茎を舐めさせ、もって13歳未満の者にわいせつな行為をしたものである」
 裁判官に認否を問われた男性は「間違いありません」と即答。弁護人も起訴事実を争わない姿勢を示し、疑われる罪を全面的に認めた。
 2月29日午後、札幌地方裁判所。被害発生から2年8カ月が過ぎ、一度は闇に葬られかけた事件がようやく裁きの場に持ち込まれた。


 その事実を初めて世に知らしめたのは、地元紙の社会面に載った30行ほどの記事だった。
《道警本部に所属する20代の男性巡査長が、同居していた女児にわいせつな行為をしたとして、強制わいせつの疑いで書類送検されていたことが24日、道警への取材で分かった》
 報じたのは、2021年12月25日付の『北海道新聞』朝刊。この一報を受け、本稿記者が北海道警察に事実関係や報道発表の有無、当事者の処分などを尋ねる取材を申し入れると、道警は「すべてお答えできません」と回答を拒み、一切の事実確認に応じなかった。

事件が起訴された時は、すでに発生から2年半が過ぎていた(札幌地方検察庁が入る札幌市中央区の札幌第三合同庁舎)

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被害女児の祖父母が検察審査会へ審査を申し立てていなければ、事件は闇に葬られていた可能性が高い(昨年1月下旬、札幌市中央区)

2月下旬には別の警察官によるわいせつ事件が報じられたが、本誌の取材に警察は「お答えを控える」(札幌市中央区の北海道警察本部)

事件が起訴された時は、すでに発生から2年半が過ぎていた(札幌地方検察庁が入る札幌市中央区の札幌第三合同庁舎)

被害女児の祖父母が検察審査会へ審査を申し立てていなければ、事件は闇に葬られていた可能性が高い(昨年1月下旬、札幌市中央区)

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