Agri Report ──岩見沢市「スマート農業」の可能性
ここまで来たロボット農機の実力 最先端技術で拓く地域農業の未来

2021年10月号

5Gを活用した遠隔監視制御で協調作業を行なう複数台のロボットトラクター(※写真は全て岩見沢市提供)


IoTのまち岩見沢が挑む農業課題の解決

かねてから取り組んできた「スマート農業」が、2018年冬放送の人気ドラマ「下町ロケット ゴースト・ヤタガラス」の題材になったこともあって、ロボットトラクターやロボットコンバインがまちのひとつの象徴的存在になった感がある岩見沢市(松野哲市長)。同市独自のICT(情報通信技術)基盤を利用するこれらのロボット農機は年々進化を見せており、近く予定されている実証実験にも高い関心が寄せられている。それは、複数圃場の無人走行トラクターを遠隔地から一括監視制御するという夢のような世界。農作業の省力化や効率化のみならず、新規ビジネス創出の可能性も秘めているプロジェクトだ。今回のAgri Report は、IoT、ビッグデータ、AI、ロボットといった最先端技術を活用し、未来に向けて地域の農業を切り拓いている同市の取り組みを紹介する。
 

遠隔地のロボット農機を制御


 今秋、岩見沢市スマート・アグリシティ実証コンソーシアム(北海道大学・NTT・NTT東日本・NTTドコモ・岩見沢市で組織)の主催で行なわれる予定の実証実験は、5Gをはじめとする高速通信技術を用いて、ひとつの場所から2カ所の農地で各2台の無人走行トラクターを1人で同時に遠隔監視制御するというものだ。
 具体的には岩見沢市新産業支援センターをオペレーション拠点に、そこから約40キロ離れた札幌市の北大構内農場、そして同じく約7キロ先の岩見沢市北村赤川にある圃場のトラクターの走行を制御する。
 この実証実験は、実際の農作業における活用をテーマにしている。北村と北大農場ではそれぞれ異なるメーカーの車両を利用するが、農家それぞれで取り扱っている農機のメーカーが違っているのは一般的なこと。メーカーの区別なく汎用的に活用できることを示すことで、社会実装時のスピーディで幅広い普及を念頭に置いている。
 加えて無人走行のスタート地点を農家の倉庫とし、そこから公道を走って圃場に至るルート設定も実際の現場での活用を想定したものだ(※公道走行は警察などから実証実験のための許可を得て実施)。
 このような岩見沢市におけるスマート農業の取り組みの牽引役を果たしている研究者が、北大大学院農学研究院副研究院長の野口伸教授。そもそも同市がスマート農業に注目した背景には、行政面積の42%が農地で水稲の作付面積が道内一を誇るなど農業が基幹産業のひとつでありながら、担い手の減少や高齢化、1戸当たりの経営面積拡大といった多くの課題を抱えていた事情があった。
 現在に至る取り組みは、それらの克服に向けて最先端技術を活用して農作業の効率化や省力化、収量や品質の向上を目指そうと始まったもの。その意義について野口教授は次のような趣旨でコメントしている。
「少ない人数で安定して美味しいものを生産できるようなシステムを作っていくことが重要な課題。次に大切なのは農業を魅力的なものにしていくこと、若い人たちが農業という産業は面白いとなっていくことが一番健全なスマート農業の発展方向だと思います。それによって地域が潤う、地域に人が定着するということが大切で、そういった発展がスマート農業の在るべき姿だと思います。
 

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遠隔監視センターで複数のロボットトラクターの走行を見守る(岩見沢市新産業支援センター)

市内の農地ではロボットコンバインも活躍している

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