狩人、銃を奪われる
「もう誰も撃てなくなる」

2020年7月号

現場に立つ池上治男さん――示す方向、土手の前に男性が立つあたりにヒグマがいたという(5月下旬、砂川市宮城野)

ヒグマ駆除のハンター受難。違法性問われ許可取り消し

民家の近くにヒグマが出た。役所に呼ばれたハンターが駈けつけ、依頼を受けてクマを射殺。地域住民に安心が戻り、関係者一同が胸を撫で下ろす。ところが警察は駆除の担い手を罪に問い、所管庁は銃所持許可を取り消した。当事者の不服申し立ては棄却され、銃は今も差し押さえられたまま。武器を奪われたハンターは、不意の仕打ちに当局への不信感を募らせる。「これでは誰も駆除に協力できない」――。
 

警官ら立ち会いで発砲。2カ月経て“容疑者”に

 
「これは私個人に限った問題じゃない。ハンター全員にかかわることですよ」
 池上治男さん(71)は、そう訴える。北海道猟友会砂川支部の支部長を務める、現役のハンター。とはいえ現在、銃は持っていない。警察に取り上げられたためだ。
「警察とはむしろ、協力し合う関係だった。それがこんなことになっては、信頼関係が台なしです。親しい警察官も今回のことは『おかしい』って言ってますよ」
 語られる「こんなこと」とは、何なのか。
 一昨年8月21日早朝、砂川市郊外の宮城野地区にヒグマが出た。現場は住宅街ではないものの、近くに複数の民家が建つ。周辺ではその3日ほど前から目撃情報が相継いでおり、地域住民に危害が及ぶ可能性があった。
 住民の通報を受けた地元・砂川警察署(当時)と砂川市の担当課は、現場に職員を向かわせるとともに猟友会メンバーに臨場を依頼する。支部長の池上さんともう1人、計2人のハンターが駈けつけ、合流した。
 撃たなくていいのでは――。
 警察官と市職員に対し、池上さんはそう提案したという。
「見たら、80㎝ぐらいの小さい子グマなの。そうでなくても我われは普段から、できる限り撃たないで済ませることにしてるので、私としては『やめたほうがいい』と。しかし役所は、撃ってくれと言う」
 警察官らは付近の住民に外へ出ないよう指示し、近くに待機。発砲のタイミングは池上さんらハンターに委ねられた。結果として引き金が引かれたのは、クマが立ち上がって池上さんのほうへ向かってきたためだ。クマの背後には高さ8mの土手。狩猟の世界でいう「バックストップ」の役割を果たし、銃口を向けてもおよそ危険はない。経験30年超の池上さんが16mの距離から放ったライフル弾は1発でクマを倒し、同行したもう1人が至近から留めの1発を撃ち込んだ。
 2カ月後、この駆除行為が突然「事件」となる。
 

警察は鳥獣保護法違反、銃刀法違反、及び火薬取締法違反の3つの容疑で事件を送検した(砂川市の旧・砂川警察署庁舎)

自然に囲まれて暮らす池上さんは「本当なら撃ちたくない」という(手帖に挿んで持ち歩いている自筆のイラスト)

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地元の役所は今も池上さんとの信頼関係を維持、本年度も市の鳥獣被害対策実施隊員に任命している(砂川市の砂川市庁舎)

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