函館消防・不正手当問題〈2〉
深夜出動で全員「時間外」報告

2019年7月号

現場職員の多くが不正手当の返還を求められることになり、内部からは「事務方の残業手当にもメスを」との声も挙がり始めたという(函館市の函館市消防本部)

函館消防、近く調査結果公表。不正受給手当は返還請求へ

本誌前号で報じた「疑い」が、近く事実として裏づけられることになる。函館市の消防署などで昨春まで続いていた、深夜勤務に伴う時間外手当不正受給問題。内部調査にあたっている同市消防本部は近く調査結果の一部をまとめ、不適切支給が確認された手当の返還を求める方針だ。不正は短くとも6年間にわたって続き、調査対象者の多くが関与していた可能性があるという――。(取材・文 小笠原 淳)
 

公文書が語る虚偽報告

 左頁に掲げたのは、函館市内にある消防出張所の時間外勤務を記録した文書。本稿記者が6月4日、函館市への公文書開示請求で入手したものだ。手元にある計789枚(2016―17年度ぶん)の中から、直近の18年3月の簿冊を見てみる。
 写真に並ぶ職員5人の記録を見ると、この中の4人が同じ災害現場に赴いたケースが2件あったことがわかる。1つは3月2日午前2時02分からの「万代町風水害出動」、もう1つは翌3日午後10時13分からの「梁川町建物火災出動」。いずれも深夜帯で、1つの出張所から4人が同時に出動、全員が「時間外勤務」扱いとなっている。
 この出張所では原則として毎晩4人が夜勤に就き、シフトを組んで各自一定の仮眠(休憩)時間を確保している。全員が同時に休憩をとることはなく、常に誰か1人以上は起きて待機している決まりだ。当然ながらその場合、起きている職員は「時間外勤務」扱いとならない。
 だが。
 先の2件のうち「万代町」への出動では連続して1時間33分、「梁川町」では同じく2時間10分、4人が「時間外勤務」に就いたことになっている。同じ職場で夜勤中の全員が、まったく同じ時間帯に休憩返上で災害出動した――。記録はそう語っているのだ。
 結論を言えば、2件の記録には不適切な報告が含まれている疑いがある。1つの出張所で深夜に全員が休憩中となる時間帯は、存在しないからだ。だがこの報告は幹部職員の決裁を受け、いずれも「時間外勤務手当」の支給対象となった。
 函館消防では、そのような事例が多数あったとされている。
 

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各表の上から4段めに日付、その下に「時間外勤務」の概要が記されており、4人が勤務する深夜帯に4人全員が時間外を報告したケースが複数あることが認められる(函館市が開示した市内出張所の『時間外勤務命令簿』=2018年3月ぶんの一部)

各表の上から4段めに日付、その下に「時間外勤務」の概要が記されており、4人が勤務する深夜帯に4人全員が時間外を報告したケースが複数あることが認められる(函館市が開示した市内出張所の『時間外勤務命令簿』=2018年3月ぶんの一部)

 
 
事実関係公表「月内にも」

 前号既報の通り、函館市消防本部(近ちかあらし嵐伸幸消防長)は本年3月、不正手当の存在を指摘する匿名の告発を受けた。
 
 

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