砂澤 陣の新アイヌの誤謬【第1回】
差別と腐敗を拡大する「アイヌ新法」

2019年6月号

(すなざわ・じん)1963年生まれ。世界的彫刻家、砂澤ビッキ(故人)の長男。幼少の頃から木と彫刻刀に親しむ。現在は「ビッキ文様」を継承するとともに、ビッキ作品の修復・保全活動を行ない、さらには自ら木工作品を制作する他、日本の伝統的染色技法の注染で仕上げる「日本手拭い」の図案も手がける。自身のブログ「後進民族アイヌ」でアイヌ利権と偏向性の強いアイヌ史研究の問題を告発し続けている

「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律案」──いわゆるアイヌ新法が4月19日の参院本会議で賛成多数で可決・成立した。白老で国立アイヌ民族博物館などを整備する「民族共生象徴空間」のオープンを前にメディアもこぞって「アイヌ推し」に走っている印象だ。だが、このような流れに真っ向から異を唱えているのが、ほかならぬアイヌ系の血を引く工芸家の砂澤陣氏(56)である。その砂澤氏は「アイヌ新法は差別と腐敗を拡大し、日本人を分断する天下の悪法」と断言する。かつて連載し好評を博した同氏の姉・砂澤チニタ氏(故人)による「アイヌの誤謬」。その新装版を今月号からお届けする。
 

閣議決定後の“駆け込み訴え”

 2月15日に閣議決定され、国会に送られていたアイヌ新法がこのほど成立した。
 通常、こうした法案は閣議決定以前に内閣部会に持ち込まれ、問題点などについて論議される。だがこのアイヌ新法は、本来の手続きとは異なる国土交通部会に突然提出され、現在アイヌ政策担当大臣を兼ねる石井啓一国土交通大臣の主導により、ほとんど議論らしい議論が行なわれることなく、極めて不明瞭な形で部会了承がなされた経緯がある。
 この法案に疑問を抱き、国土交通部会で反対意見を述べたのは青山繁晴参議院議員・鬼木誠衆議院議員・宮崎政久衆議院議員の3氏だけだったと報道されている。この時の部会では趣旨説明が簡単にされただけで、ほとんどの議員は「北海道の観光振興に役立つ法案」程度の認識しか持っていなかったという。
 ところで、この法案に反対意見を述べた青山議員の「アイヌ協会の中に本当のアイヌの血を引く方は2割くらいしかいない」という発言が切り取られ、公益社団法人北海道アイヌ協会(加藤忠理事長・本部札幌、以下アイヌ協会)や北海道新聞から非難を浴びる出来事があった。
 閣議決定後の2月19日、私はその青山議員に参議院議員会館の事務所で面会し、約1時間、アイヌ政策拡大の問題点とアイヌ協会の実態、そして同氏の発言について意見交換をした。面会前、青山議員とは20回以上にわたりメールのやり取りをしていたので、テーマについて面会直後から深い議論が始まり、率直な意見を伝える事ができた。私が青山議員とのメールや面会で一番強調したのは「本当にアイヌの血を引くものは2割くらいしかいない」発言について、アイヌ協会側に謝罪をしてはならないという点だった。
 なぜなら過去に、中曽根康弘元首相・山崎拓元衆議院議員・平沼赳夫元衆議院議員・麻生太郎衆議院議員(現財務相兼副総理)といった方々が「単一民族発言」をめぐって、アイヌ協会(当時は北海道ウタリ協会)などから理不尽な抗議を受けて謝罪を余儀なくされ、この事でアイヌ協会側の予算要求が拡大・加速し、アイヌ利権の現状に繋がった経緯があるからである。
 アイヌ協会の阿部一司副理事長は、北海道新聞の取材に対し「アイヌの血を引いたものが2割しかいないのは有り得ない。先住民族の権利を認めた2008年の国会の決議を理解していない」と反論している。
 青山議員の発言に言葉足らずの面があったにせよ、この発言がアイヌ協会側にとって大いに都合が悪かったのは事実なのだ。
 アイヌ協会側は「2割は有り得ない」としながらも、「アイヌの定義」を示すことができないばかりか、アイヌ民族の存在すらも立証できないからだ。もしアイヌ協会側が、青山議員の発言を「アイヌのことを理解していない」と主張するのであれば、何をもってアイヌとし、協会内にアイヌの血を引いた会員が何割いるかを明確に示した上で、同氏の発言は間違いであると指摘しなければならないはずである。
 これまでも自分たちに都合の悪い発言を「差別」だと叫び、好き勝手を通してきたアイヌ協会。この動きに歯止めを掛け、「青山発言」の真の意図を多くの国民に知ってもらうためにも、私は「理不尽な要求に屈しないでもらいたい」と要求し、同氏もそれに同意してくれた。
 

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