旭川発・問われる違法捜査③
「令状主義に反し、違法性は重大」

2019年5月号

無罪の言い渡しを求めていた足立敬太弁護士は実刑判決に憤りを隠さず「たいへん不満」と疑義を呈した(3 月28 日午後、旭川市内)

無令状GPSを裁判所が断罪。判決は実刑、被告が即日控訴

令状主義に反し、許容できない――。本誌2月号から報告を続けている冤罪疑い薬物事件で3月下旬、裁判所が警察の無令状GPS捜査を「違法」と判断した。一方で被告の男性の無罪主張は退けられ、覚醒剤所持で実刑が言い渡される結果に。違法収集証拠を排除した裁判所の判断を高く評価しつつ、有罪判決に「納得できない」とする男性は、即日控訴を申し立てた。直接証拠を一切欠いた事件でその人が身柄を拘束されてから、まもなく丸2年が経とうとしている。(取材・文 小笠原 淳)
 

プライバシー侵害。違法程度は「重大」

 判決は、予定時刻よりも2分ほど早く言い渡された。「主文。被告人を懲役6年、及び罰金150万円に処する」
 その瞬間、足立敬太弁護士(旭川弁護士会)の眉根に皺が寄り、口が“への字”に結ばれる。向かい合う男女2人の検察官は、対照的にほぼ表情を欠いていた。
 3月28日午後、旭川地方裁判所。昨年12月に始まった公判は、検察の求刑よりも懲役が1年短いだけの実刑判決に幕を閉じた。佐藤英彦裁判長の判決理由朗読は約1時間半に及び、無罪を主張し続けた被告の男性(46)はその間、法廷の中央で身じろぎもせず裁判長を見つめ続けた。
 無表情を維持していた男性検事が思わず下唇を噛んだのは、言い渡しの後半、警察のGPS捜査に対する裁判所の判断が示された時だ。
 

内部に覚醒剤が仕込まれた磁石つきプラスチックケースは、U 字鋼の内側にとりつけられていたとされる(旭川市内)

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検察は「おおむね」という言い回しを使って地裁判決を評価したが、GPS 捜査への違法判断をどう受け止めたのかは明かしていない(旭川市の旭川地方検察庁)

被告の男性は当初、警察による執拗な行動監視の事実を誰にも信用して貰えなかったという(旭川市の旭川刑務所)= 2016 年9 月の内部公開時に撮影

内部に覚醒剤が仕込まれた磁石つきプラスチックケースは、U 字鋼の内側にとりつけられていたとされる(旭川市内)

検察は「おおむね」という言い回しを使って地裁判決を評価したが、GPS 捜査への違法判断をどう受け止めたのかは明かしていない(旭川市の旭川地方検察庁)

被告の男性は当初、警察による執拗な行動監視の事実を誰にも信用して貰えなかったという(旭川市の旭川刑務所)= 2016 年9 月の内部公開時に撮影

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