ウイングベイ小樽が“街”をテーマに体感型施設を強化
スポンサー支援で危機を脱出未来へ歩みだした新生OBC

2019年4月号

3月11 日に開業20 周年を迎えたウイングベイ小樽

小樽市築港の大型商業施設、ウイングベイ小樽が「街」をコンセプトにした体感型施設づくりに取り組んでいる。経営母体だった流通大手マイカルの破綻以降、2度に亘り民事再生法の適用を申請するなど、厳しい経営を強いられてきたが、昨年3月、新たなスポンサーの支援を得て本格的な再建が始まったかっこうだ。この春で開業から20周年。同施設を運営する小樽ベイシティ開発(本社小樽市・以下OBC)の橋本茂樹社長は「既存のショッピングモールにはない新しい体感型施設としての機能を強化し、札幌圏からの若い世代の集客につなげたい」と意気込みを語る。 (武智敦子)
 

2度の民事再生を越えて

 ウイングベイ小樽の前身、マイカル小樽はJR小樽築港駅の貨物ヤード跡地の土地区画整理事業に伴う再開発を目的に小樽市が誘致。大阪に本社を置くマイカルが総工費約600億円を投じて1999年3月に開業した。
 延べ床面積34万平方メートルの施設には、スーパーや百貨店、ホテル、シネマコンプレックスなどの他に専門店やテーマパーク、スポーツクラブなどが併設され、当時国内最大級の商業施設として大きな話題を集めた。
 当時、出店をめぐり地元では小売業などを中心に反対の声が上ったが、“巨艦”の集客力に期待し、開業半年後の99年9月には施設周辺に新南樽市場が開業している。
 施設を管理運営するOBCは、マイカルなどの出資で91年に設立された経緯がある。しかし、2001年に経営母体のマイカルが破綻したことに連鎖して資金繰りが悪化。同年9月、札幌地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は約492億円だった。
 再生手続きにより資産売却を進め、03年には施設名を「ウイングベイ小樽」に改称し再スタート。再生手続きは05年に終了したが、イオン北海道への債務194億円の弁済は滞った。
 07年にOBCは札幌地裁に債務を圧縮する特定調停を申し立て、債務を29億円に圧縮することで中間合意を取り付ける。ところがスポンサー企業が撤退したため、やむなく同社は09年、特定調停を取り下げるに至る。
 国内企業や外資系など再建支援に名乗りを上げる企業は少なくなかった。しかし、施設が大きく莫大なエネルギーコストがかかることや、小樽市への固定資産税の滞納などが支援の足枷となり、スポンサー探しは難航した。
「関心はあっても実情が分かってくると『これでは手を出せない』と手を引いてしまう。玄関までは来るがその先には入っていただけない状況が続きました」(橋本社長)。
 だが明るい兆しもあった。08年に家具・インテリア大手のニトリが出店。これがきっかけとなり、大型ホームセンター、スーパービバホームが12年にオープンした頃から潮目が変わってきた。その後、衣料品のしまむらも進出するなど、全国規模の知名度の高い大型店が軒を並べるようになった。
 このような中で、17年12月に中小企業再生ファンドのルネッサンスキャピタル(東京千代田区)がOBCへの支援を決め、イオン北海道が保有する債権を買い取った。この後、OBCは札幌地裁に債務圧縮を目的としたプレパッケージ型の民事再生法の適用を申請し受理された。負債総額は280億円だった。
 ルネッサンスキャピタルは、独立行政法人中小企業基盤整備機構などが出資するファンドで、財務改善や事業の見直しにより再生可能な中小企業の支援を行なっている。
 ルネッサンスキャピタル主導の下で昨年3月、OBCの会社分割が行なわれ、施設を管理運営する同名の新会社「小樽ベイシティ開発」と、再生計画を担う「小樽築港開発」が設立された。この中で橋本社長が引き続き新生OBCの経営に当たることになったというのが、これまでの一連の流れだ。「厳しい状況にある地方の商業施設で、知名度の高いチェーン店が撤退せずに営業を続けてくれたほか、地元や札幌のテナントの下支えもあった。この事実がスポンサーであるルネッサンスキャピタルの評価につながった」と橋本社長は明かす。
 

「これからは雇用を増やしたい」と話す橋本社長(はしもと・しげき)1951 年東京出身。74 年早稲田大学政治経済学部卒業。貿易会社などを経て78 年ニチイ(現イオン北海道)入社。97 年マイカル(同)経営企画室長、98年営業企画部長。2003 年小樽ベイシティ開発再建のため出向し07 年同社に移籍し取締役に就任。14 年専務取締役、16 年から代表取締役

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充実していく体感型施設

 全国展開する大型店や飲食店に専門店、ホテルやシネマ、ボーリング場などさまざまな業種、業態の店舗、施設が一同に集うウイングベイ小樽──。現在ここは、「屋根のある街」というコンセプトを掲げている。新生OBCは、この「街」をテーマに、体感型施設の整備を柱とした新事業を次々と打ち出し再建に取り組んでいる。
 その第一弾となるのが、昨年7月に館内にオープンしたグランピング施設「海と空」と、スポーツクライミングのボルダリング施設「ベイ・サイド・クリフ浜壁」の2施設だ。
 グランピングとはグラマラス(魅力的な)とキャンプを組み合わせた造語で、豊かな自然環境の中で非日常を楽しむ新たなキャンプスタイルのこと。
 手ぶらでキャンプを楽しめるのが魅力で、小樽港を眺望する4階のベイテラスを改装した「海と空」には5張のテントが設置されている。テントの中には冷暖房、ベッド、冷蔵庫などが完備され、テラスにはシャワールームや100席のバーベキュー設備も設けた。
 ボルダリングは、突起物のある人工の壁を岩肌に見立ててよじ登るスポーツクライミングで、2020年の東京五輪から正式種目になる。3階に開設されたボルダリング施設「ベイ・サイド・クリフ浜壁」には、高さ3・6メートル、幅21 メートルのボルタリングウォール(人工壁)の他に高さ8・1メートルのクライミングタワー、同じく1・6メートルの子供用も設けた。
 今年はさらに体感型施設を拡充するため、スポーツジムやスパリゾートを展開する小樽の地元企業、ソプラティコと提携。4階フロアで東京のコナミスポーツが運営していたジムやプール、温浴施設を整備しジムと露天風呂付の温浴施設を併設したスパリゾートとして3月中旬から順次オープンする。
 4階にはシネマやグランピング、ボーリング場があり、これにジムとスパリゾートが加わることで、体感型施設が集約することになる。「なぜ、体感型施設を拡充するのか。再建にあたり既存のショッピングモールと同じことをやっていては差別化を図ることは難しいからです。何よりも小樽は海と山があり、マリンスポーツやスキーを楽しむことができる。歴史と文化があり、管内の後志は食の宝庫。
 これだけ恵まれたまちは全国どこを探してもそうそうないと思います。この地域特性を背景に、体感型の施設を充実させていきたい。そうすれば、札幌圏に近いという地の利もあり必ず人は集まります」
 と橋本社長は意気込む。
 道内有数の観光都市として年間約800万人の観光客が訪れ、近年は中国や韓国などからの外国人観光客も急増している。「インバウンドや国内の観光客はもちろんですが、やはり一番大切にすべきは地元や近隣の札幌圏などから来るお客様だと考えています。ここ築港地区は小樽中心部へのゲートウェイ。ウイングベイ小樽が活性化すれば、それに比例して小樽を訪れる人が増えるのは間違いありません」(橋本社長)
 小樽に人を呼び込むには、観光資源のさらなる開発も必要だ。橋本社長は、対象のひとつに港湾エリアを挙げる。
「商港として発展した小樽と横浜は似ていると思います。私は東京出身ですが、子供の頃は横浜に対して田舎のイメージがありました。それが高校生の頃からお洒落なまちへと様変わりした。山下公園や外人墓地など港やその周辺の開発が進んで洒落た飲食店などが増え、東京から若者がどんどん訪れるようになった。小樽も港やその周辺の倉庫街をもう少しリノベーションすれば、間違いなく人は集まってくると思います。
 今は地元の若者たちが札幌に出ていきますが、小樽のまちの魅力を高めることで札幌からここに住む人を増やすのです。それには10年、20年と時間がかかるかもしれませんが、昨年8月の市長選で迫俊哉市長が誕生したこともあり、これからの観光振興に期待したいところです」
 

小樽港を眺望するテラスに開設されたグランピング施設「海と空」

 

 

「これからは雇用を増やしたい」と話す橋本社長(はしもと・しげき)1951 年東京出身。74 年早稲田大学政治経済学部卒業。貿易会社などを経て78 年ニチイ(現イオン北海道)入社。97 年マイカル(同)経営企画室長、98年営業企画部長。2003 年小樽ベイシティ開発再建のため出向し07 年同社に移籍し取締役に就任。14 年専務取締役、16 年から代表取締役

小樽港を眺望するテラスに開設されたグランピング施設「海と空」

 

 

雇用を拡充し次の世代へ

 ここに至るまでの道のりを橋本社長は次のように振り返る。
「2回目の民事再生法の適用を申請してから、テナントの説明会を開きましたが、誰一人として文句を言う人はいませんでした。むしろ『良かった』という声も聞かれ、テナントのオーナーの中には『これで安心して代替わりできます』と声をかけてくださった方もいました。
 再建の道筋をつけるまでに十数年という長い時間を要しましたが、この間、私たちもテナントもなんとか頑張ってきた。だからこそ強い信頼関係を築くことができたのだと思っています」
 現在、ウイングベイ小樽には約2000人が働き、このうちの半数約1000人が小樽市民だ。「これまでは雇用だけは絶対に守るという信念でやってきましたが、今後は守るだけでなく増やしていくことが自分の役割。そのためにも、この施設の再建を完成させなければならない。
 それには今後数年を要すると思いますが、本当の再建をして、将来の小樽のためにこの施設を次の経営者に引き継いでいく。それが結果的には小樽のためになると信じています。私たちが経験してきた苦しみは、二度と次の世代に味あわせたくありません」
 開業から20周年──。「街」をコンセプトとした大型商業施設の周辺には、病院やマンションなどが立ち並び、築港地区の町並みを形成している。
 小樽市中心部へのゲートウェイ、海辺の街、商業の街、そして暮しの街。街の中核を担うウイングベイ小樽の新たなまちづくりへの挑戦に注目していきたい。

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