連携企業の「協定破棄」で挫折した下川町のSDGsモデル事業
原因は背伸びと補助金頼み伝わらなかった町の“熱量”

2019年12月号

現在は郷土資料の収蔵施設になっている旧一の橋小学校。一帯は高齢・過疎化が進み限界集落になっている。この校舎を今年中に改修・整備し、SDGsのモデル事業第1号になる、町と道外の2法人によるチョコレート製造事業に着手する計画だった

SDGs(持続可能な開発目標)モデル自治体の上川管内下川町(谷一之町長)が進めていた道外法人とのチョコレート製造事業計画が10月上旬、連携先から「連携協定を破棄する」旨の通知を受けて挫折した。昨年夏の協定締結から1年余り、事業計画の詰めの甘さから町内での合意形成がなされず、今春の町長選の争点にされたことなどに連携先が懸念を表明したためだ。過去10年間ほど、国のさまざまなモデル事業を導入し、町外から高評価を得てきた同町での「SDGs事業第1号」失敗に至るまでの経緯を振り返り、自治体やまちづくりのあり方を考えてみた。 (下川町在住ルポライター・滝川 康治)
 

“ボタンの掛け違い”などから協定の締結から1年で破談に

 
 昨年、国のSDGsモデル自治体に選定された道北の下川町。そのモデル事業の第1号は、市街地から10数キロ離れた旧一の橋小校舎の一部を6千万円を投じて町が改修・整備し、民間事業体によるチョコレート製造事業を実施する計画だった。
 コールセンター大手の(株)ベルシステム24ホールディングス(東京都・柘植一郎代表取締役)が3人ほどの障害者を雇用し、「久遠チョコレート」ブランドを全国展開する一般社団法人ラ・バルカグループ(愛知県・夏目浩次代表理事)が運営のノウハウを提供、実際の製造・販売は新たな現地法人を設立して実施するとの構想だ。昨年7月、町と道外2者は「SDGsの推進と持続可能な地域づくりに関する連携協定」を締結し、道内外にアピールしてきた。
 しかし、町の計画の杜撰さなどから今春、2者が懸念を表明し、10月9日には「協定破棄」を申し入れるに至る。ボタンの掛け違いもあって下川町の計画は頓挫した。
 10月24日、町役場で開かれた記者会見で、計画の挫折について、谷一之町長はこう総括した。「住民との合意形成や計画の全体像をめぐり、2者との信頼関係の修復が図れなかった。1年間、さまざまな努力をしたが、成果を得られなかった、ということです…」
 配布された「菓子製造事業が着手に至らなかった事についての報告」は、A4判のペーパー1枚。「連携する2者から懸念事項が示された」とあるだけで、詳細な経緯や懸念の中身は書かれていない。
 非公開の理由は、2者とのやり取りのなかで「報道機関に詳細を発表しないでほしい」との要請を受けたからだという。
 

苦渋の表情で報道発表に臨んだ谷一之町長(10月24日、下川町役場で)

記者会見の配布資料はA4判のペーパー1枚だけ。会見の体を成していなかった

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昨年7月、札幌市内のホテルで行なわれた連携協定の調印式。左端がベルシステムの柘植社長、右端がラ・バルカグループの夏目代表理事

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