札幌の宇奈整骨院が保険金詐欺で摘発された理由
「交通事故関係の患者とグルなら何でもできる」

2019年10月号

宇奈整骨院の違法看板は設置されたままだ(手稲区の幹線道路沿いで8月21日撮影)

被保険者が病気やケガ、死亡したと見せかけて多額の保険金を騙し取る詐欺事件が後を絶たない。今回報告する事例は札幌の整骨院を舞台にしたものだ。「交通事故専門」「元警察官」を売り文句にして患者を集めていた柔道整復師が7月下旬、詐欺の疑いで道警に逮捕されている。周辺を取材して浮かび上がってきたのは、患者集めのために違法な看板を林立し、患者とグルになって保険会社を騙していた悪質極まる手口だ。(本誌編集長・工藤年泰)
 

林立する異様な看板

 
 札幌市内手稲区の幹線道路の交差点で「交通事故専門」と大書された文字がひときわ目立つ──。これは宇奈整骨院(手稲区前田)の勇保則院長(46)が自院の周辺数カ所に設置した立て看板のひとつだ。
「整骨院でこんな看板を出している人は誰もいません。土台、広告の制限を規定した柔道整復師法に抵触する恐れがある内容でしょう。彼の元患者から話を聞いたことがありますが、ウチは交通事故専門で保険適用の患者は診ない、おまえのようなカネのない人間は来なくていいと言われたことがあるそうです」
 こう話すのは、同じ手稲区で整骨院を営む柔道整復師のひとりだ。聞けば勇院長は、自ら派手な立て看板を林立して集客を図る一方で、周辺の整骨院の看板表記には何かとケチをつけ、細かなことで保健所などに通報することもあったという。
 宇奈整骨院は2006年1月に手稲区前田地区で開業。勇院長は業界団体である北海道柔道整復師会には加入していない。勇院長の逮捕以後も公開されていた同院のホームページを閲覧すると「当院は交通事故患者を専門に施術しています」「元警察官の視点から交通事故の被害者を救済するために勉強の毎日です」などの表記が確認できた。ここからも日常的に保険適用の一般患者を敬遠していたことがうかがえる。
 その勇院長が保険金を騙し取った詐欺容疑で手稲署に逮捕されたのは7月22日。注目されるのは、患者として通院していた男女合わせて5人が勇院長と一緒に逮捕されている点だ。勇院長は2016年12月から18年4月にかけて、これらの患者と共謀して施術の回数を水増しするなどした書類を損害保険会社に提出して、300万円あまりを騙し取ったとされている。
「要は院長と患者が完全にグルだったということでしょう。」
 

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