伝えたいのはホテル業の面白さ業界全体で“人を育てる”努力を

2018年5月号

「開校式・第一回入学式」で新入学生代表の小林冬冴さんに入学許可証を手渡す野口社長(4月3日午前)

◆「企業は人なり」野口観光の未来戦略
野口観光グループ(野口秀夫社長)の創業期を支えた苫小牧プリンスホテルが、約7年間の休業期間を経て4月1日に「新苫小牧プリンスホテル和(なごみ)」と名称も新たに大幅リニューアルオープン。その館内に、収入を得ながら3食付の寮生活でホテルマンとしてのさまざまな知識やスキルが学べる「野口観光ホテルプロフェッショナル学院」が同月3日、開校した。業界全体で深刻化している人材不足に対し、同社が一丸となって打開策を講じた格好だが、野口社長の心を強く動かしたのが、“観光の仕事のやりがいや面白さを伝えたい”という若者たちへの思いだ。来たる6月には札幌の奥座敷・定山渓温泉への初進出も控えている。新規事業目白押しの野口社長にグループの現在地と未来戦略を訊いた。(3月26日、新苫小牧プリンスホテル和内で収録)

入学できなかった方にも学びの機会を提供したい

 ──4月3日、新苫小牧プリンスホテル和内に、野口観光ホテルプロフェッショナル学院が開校します。
 野口 開校にあたり、とても協力的にスピード感を持って対応していただいた道や苫小牧市には、本当に感謝しています。
 ──生徒募集では、定員を大きく上回る応募があったようですね。
 野口 定員30人で募集したところ、北海道と東北から50人も応募していただきました。これは学院の設立準備室のメンバーが手分けして、約400もの高校をまわった成果とも感じています。そして、面接させていただいた入学希望者は皆、意欲の高い学生さんばかりでした。
 選考はかなり悩みましたが、初年度の入学者数は32名。入学が叶わなかった志願者のうち、当社で働くことを希望した12名は従業員として採用しました。ですが、この12名にも学びの機会を与えてあげたい。例えば季節ごと時間に余裕のある時期を見計らい学院に入ることを希望した従業員を対象にした集中講座を開くことなどを考えています。
 ──人を育てずして企業の未来はない、ということでしょうか。
 野口 それは強く感じています。父(創業者の故・野口秀次氏)はかつて、出身地である静岡県伊豆の下田市に返還不要の奨学金制度を設けようと、市役所と協議して寄付を始め、これを基に同市は基金を設立しました。父自身が経済的な理由で、進学したくとも就職の道を選ばざるを得なかったという経験をしていましたから、自分と同じような境遇で働いていても勉強したいという人には、何とかしてサポートしたいという思いが強かったのでしょう。野口観光としての累計寄付金額は現在までで8500万円に上っています。当時父は、累計1億円の寄付を目指すと言っていましたが、父が生まれて100年という節目を迎える今年、目標に到達することができそうです。
 そういった取り組みを省みて、人を育て希望や未来を託すという父の意思を受け継いでいく、という思いも学院設立の理由のひとつでした。
 また、社会人として歩み出すこれからの若者に対して、観光の仕事とはどういったものかを知ってもらった上で職場に入っていった方が、仕事のやりがい、面白さを見つけやすいのでは、と感じたことも理由にあります。
 ──授業のカリキュラムは野口社長が主導して組み立てたのですか。
 野口 設立準備室の役員を中心に行ないました。私からお願いしたのは、面白い授業をして欲しいということだけ。短大や大学の授業の様子を見学したことがありますが、授業に集中していない学生が目立ち、つまらなそうに勉強している様子でした。それではダメだと。例えば、実務の経験を積んだ方々の講義などは、学生たちも興味を持って耳を傾けるのではないかと思っています。実際の職場で活用する機会の多い英語・中国語・韓国語の授業も充実させていきます。
 そして、地元・北海道に関する知識をたくさん養えるような学習も進めていく意向です。
 ──学院は土屋ホームが運営している技能職育成の土屋アーキテクチュアカレッジの手法も参考にされているそうですね。
 野口 社員として採用し給与を支給しながら、入学金や授業料の負担なしで職人を育てるという土屋アーキテクチュアカレッジの運営手法は、正に目からウロコでした。学生の間で先輩・後輩のつながりもでき、そこから学ぶことも多いでしょう。また、卒業後に同業他社への転職を認めているのも、同校で既に行なっていたことでした。当学院の運営手法は全般的に土屋アーキテクチュアカレッジに倣いました。
 ──学生たちの寮も近くにある。
 野口 ホテルの真裏、校舎入口のすぐ近くにあります。しかしながら、次年度以降は部屋数が足りなくなりそうなので、ホテル近くの土地に新たな寮を建設する考えです。
 将来的な構想として、この学院からプロパーの料理長を出したいという思いがあるんです。ですから調理師の養成にも力を入れていきたい。そうなると、受け入れる寮の部屋数は拡充する必要がありますから。

職業訓練校も併設する「新苫小牧プリンスホテル和」

客室も一新した「きたゆざわ森のソラニワ」は4月28日にグランドオープン

のぐち・ひでお 1948年3月19日登別市出身。早稲田大学商学部卒業後、71年登別プリンスホテル入社。87年社名を登別プリンスホテルから野口観光に改称。90年副社長を経て99年社長に就任。2003年に野口観光マネジメント、09年に野口リゾートマネジメントを設立。野口観光グループのトップとして現在に至る。70歳

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お客様・従業員の声を反映して章月グランドの事業方針を検討

 ──これからの担い手を育てる職業訓練校を、貴社の創業期を支えたこのホテルで開くというのも、感慨深いのでは。
 野口 登別に続いて2番目に展開したのが、苫小牧プリンスホテルでした。その躯体を活かして大幅にリニューアルしたのが、新苫小牧プリンスホテル和というわけです。
 ──生まれ変わった新ホテルのコンセプトをお聞かせください。
 野口 大きな特徴としては宿泊特化型にしたということ。以前の苫小牧プリンスホテルでは結婚式などにも対応できる宴会場を設けていましたが、それを無くし、宿泊に特化することを前面に打ち出します。
 苫小牧ではスポーツの大会や合宿が盛んで、7年前にここを閉めた後でまちが困ったのが、それらの客層の受け皿が無くなったことだったそうです。新ホテルではスポーツ関連の団体客が利用しやすいプランも用意しています。
 宿泊に特化するといっても、一般的なビジネスホテルのように簡素なものではなく、和(わ)のテイストを取り入れることで癒しを提供したかった。エントランスには枯山水をあしらい、大浴場には月ごとに登別・洞爺湖・北湯沢の温泉を持ってきて、その湯で身も心も癒していただく。そして、朝食のメインメニューもその月の湯処のホテル調理長が考案したものを提供しようと考えています。登別温泉の月には望楼NOGUCHI登別の料理長、洞爺湖の月は乃の風リゾートの料理長、北湯沢の月は緑の風リゾートの料理長が担当するといった具合です。
 ──苫小牧の新ホテルに泊まることで、野口観光グループが展開する各地の温泉や食事を楽しめる。
 野口 宿泊特化といえど、単に寝泊りするだけではなく、何かしら安らぎを感じられる宿にしたかった。その思いから和(なごみ)と名付けたんです。
 ──さる3月にグランビスタホテル&リゾートから章月グランドホテルを買い取り、定山渓に初進出することも大きな話題になっています。
 野口 6月1日から当社が営業を引き継ぐことになります。定山渓が魅力的な地域というのは以前から感じていました。何より道都・札幌の奥座敷として長年親しまれている温泉地ですから。
 数年前から幾つかの物件を紹介していただく話もありましたが、これまでは、どれも決め手に欠けていたという経緯がありました。
 ──野口観光として、章月グランドホテルをどのように新しくしていきますか。
 野口 まずは、今働いている従業員の方々やお客様から話を伺いながら、どのようにしていくかを協議することが大事だと思っています。我々が一方的に変えていってはいけないでしょう。定山渓温泉における章月グランドホテルの位置付けをしっかり把握し、お客様や従業員の要望を考慮して新しい運営をどうするべきかを検討していきます。
 ──北湯沢温泉の森のソラニワも客室の改装を終え、4月28日にグランドオープンを果たしますね。
 野口 特に小学生のお子様を持つご家族にお薦めしたいのがこのホテルです。
 ジップラインやフィールドアスレチックなど野外で遊べる施設は昨年のプレオープン時点で整備していますが、このほど館内でアクティビティを楽しめる施設も設けました。
 グランドオープンの目玉である客室の改装は、森のソラニワ全体のコンセプトであるアクティビティのイメージや、家族でわいわい楽しく過ごせる空間を目指したものにしています。新設したファミリーフロアの客室の中には、お子様が遠慮することなく飛び跳ね回れるような部屋も用意しました。また、二人連れの客室を整備したカップルフロア、女性のグループが快適に過ごせるような客室を揃えたレディースフロアも新設しました。
 また、当社が北湯沢に展開している緑の風リゾートと森のソラニワは、かつて名水亭・第二名水亭としてリーズナブルな価格が大変好評を博しました。その頃のサービス価格をどこかで残したかった。そこで当社Nポイント会員のお客様には、森のソラニワを名水亭の頃の価格で宿泊できるプランをお知らせすることにしました。低価格展開も奏功して2館の名水亭は本当に多くのお客様に親しんでいただきました。ですので、名水亭の面影をせめて北湯沢にある宿の1館だけでも残しておきたかったんです。
 ──森のソラニワは結婚式対応にも力を入れているそうですね。
 野口 レストランウェディングができる施設も整え、こちらの受注は順調に伸びています。

これから育つホテルマンのため多店舗展開で活躍の舞台を創る

 ──現在、野口観光グループの年間売上は?
 野口 約170億円です。しかしながら父の代でバブルの頃に166億円を計上したことがありました。今よりも館数が少なく、リーズナブル路線だったにも関わらず、これだけの売上を計上できたバブル期の稼働率には今でも驚かされます。
 ──これからの事業展開についてはいかがですか。
 野口 若手を中心に、2020年には売上高200億円という目標を掲げ、実現に向けた計画を進めています。私としては、現段階で当社は約2200の客室を有していることから、今の体制のままでもその売上目標は達成できると考えています。
 そして2030年の目標に掲げているのが300億円。10年間で100億円上乗せするとなると、大型ホテルの新築や運営するホテルの数を増やしていかなければならないでしょう。
 私は、今後新しいホテルを増やしていくことに関しては、このほど開校する学院の生徒たちのため、と思っているんです。学校を出たのち当社で経験を積んでいく方の中には、ホテル全体の舵取りをしたいと思う方も出てくるでしょう。そういった将来のホテルマンに手腕を発揮してもらうためにも、館の数は増やしていく必要があると感じています。
 ──野口社長としては、学院を巣立った後の人材育成もしっかり考慮されているわけですね。
 野口 おかげさまで今回の学院開設は、多方面から大きな注目を集めています。私としては当社の取り組みを見て、同業他社や行政など北海道の観光業界全体で人材育成の動きが広がっていけば良いと思っています。だからこそ、私達が先んじて成果を示さなければ、と強く感じているところです。
 ──ありがとうございました。貴社のみならず北海道観光全体に寄与する人材がここから多く輩出されることを期待します。

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