元生会の森山病院がJR旭川駅の北彩都地区に新築移転オープン
健康都市の創出を目指す旭川ウェルネスセンター

2021年01月号

JR旭川駅から徒歩5分圏内にある森山病院の新病棟

Medical Report

社会医療法人元生会(森山領理事長)が運営する森山病院(稲葉雅史院長・232床)が11月24日、JR旭川駅に近い北彩都地区に新築移転オープンを果たした。この新病棟は隣接地で建設中の健康食レストランやフィットネスクラブを備えた「旭川ウェルネスセンター」の中核施設という位置づけで、病気を未然に防ぐ「予防医学」をコンセプトに掲げた診療に力を入れていく計画だ。「森山グループが当初から目指していた健康・医療・福祉の三位一体の地域医療を提供していきたい」とする森山理事長(66)に新病院の概要と抱負を聞いた。
 

予防医学を民間とコラボ

 
 JR旭川駅南口から徒歩3分。このほど新築移転した森山病院は忠別川右岸に広がる「あさひかわ北彩都ガーデン」の鏡池を望む好立地にある。建物は地上8階建てで延床面積は約1万6400㎡と旧病院の1・5倍。1、2階は外来病棟でガラス張りのアトリウムからガーデンや大雪山系の山々を一望することができる。2階には予防医学センターとリハビリテーションセンター、3階は3つの手術室のほか医局などの管理エリアとなっている。4階から7階までが入院病棟となり、最上階の8階には職員専用のフロアと百数十人収容の「MORIYAMAホール」を設け、市民向け講演会や医学セミナーなどのイベントに活用する。
 1階には売店に加えて2016年に旭川市に誕生したプロバレーボールチーム「ヴォレアス」の常設グッズ売場も開設した。このヴォレアスと森山病院はスポーツ医学を通じて健康づくりをアピールするため9月にパートナーシップ協定を締結。売場ではチームのオリジナルTシャツやソックスなどのほか血糖値の上昇が穏やかな低GI(糖化指数)値のアカシア蜂蜜などヴォレアスゆかりの健康食品も販売している。
 3階の手術室は広さと機能性を考慮した造りになっており、将来的には手術支援ロボット「ダヴィンチ」の導入も計画、血管造影装置を導入したハイブリッド手術にも対応可能だ。検査機器はМRI(磁気共鳴撮影装置)、高速CTのほかにDSA(血管造影システム)など十数台を新規導入した。病床数は法人傘下だった愛生病院の60床を加え232床に増床。愛生病院は11月23日で閉院し、訪問リハビリテーション事業所に転用されている。
 内科や外科、整形外科、脳神経外科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、麻酔科、リハビリテーション科などの他に旧愛生病院の脳神経内科を加えた18診療科体制となり、旭川市内の民間病院としては初の形成外科と救急部も新設。乳がん治療の際などは形成外科医と連携して乳房再建術を行なう体制を整えた。
「昔の医療は命を救えば良しとする考えが主流でしたが、何より大事なのは患者さんのQOL。乳がんに限らず全ての診療科で形成外科と協力したオペを心がけていきたい」(森山
理事長、以下同)
 今後は各診療科で医師を増員し、レベルアップを図る方針だ。
 院内を見学すると1、2階の外来棟のガラス張りのアトリウムに圧倒される。燦燦と日の差し込む窓の外には北彩都ガーデンや大雪山系の山々が広がり、病院というよりリゾート施設に来たかのような解放感あふれる佇まいだ。「周辺に広がる北彩都ガーデンにマッチするカラーリングとし、院内にふんだんに光が入るような設計を取り入れました。目指したのはホスピタリティが感じられる居心地のよい落ち着いた雰囲気。患者さんの早期回復を促す空間づくりが実現できたと思います。また職員が生きがいを持って働けるよう、MORIYAMAホールがある8階には、眺望が広がるスタッフ専用の休憩スペースを設けました」
 2022年3月には隣接地の「旭川ウェルネスセンター」も竣工。13階建ての同センターは予防医療拠点と位置づけ、健康食レストランやフィットネスクラブのほかコンドミニアムも入居予定で、森山病院はそれらの中核施設となる。
 センターに開設する健康食レストランとフィットネスクラブは同院と民間の事業者が連携して運営する。
「センターの健康食レストランには当院の管理栄養士数名が加わる予定です。定番の健康食メニューのほか、糖尿病を患っている人などが健診センターで出された食事の処方箋をレストランに持っていくと、調理してくれるので家庭でも参考にできます。フィットネスクラブには理学療法士を派遣し、スポーツトレーナーやフィジカルトレーナーと一緒に運動を行ない、スポーツドクターが管理するというイメージです」
 

“健康時代”に対応する体制を整えた森山理事長 (もりやま・りょう)1954年旭川市出身。旭川北高、杏林大学医学部卒業。旭川医科大整形外科、札幌医科大麻酔科、旭川赤十字病院を経て85年に医療法人元生会森山病院理事長に就任。北海道病院協会理事、旭川日英協会会長、FMりべーる(旭川シティネットワーク)代表取締役社長。66歳

遅れる移転計画
課題山積み北海道医療大の北広島移転

厚真の砂利採取場で起きた産廃不法投棄問題を追う

江差パワハラ死問題で交渉決裂
道「因果関係」否定貫く

つしま医療福祉グループ 「ノテ幸栄の里」が新築移転
地域包括ケアの拠点として在宅生活を支援

目指すトータルヘルスケア

 
 森山病院は森山理事長の実父である故・森山元一医師が1952年に北海道で初めての整形外科の単科病院として開院。その後、移転と機能拡充を踏まえて88年から総合病院として歩みを続けている。
 法人は本稿で紹介している本院のほか、療養型病床を主体として主にリハビリを担う森山メモリアル病院を擁し、関連の社会福祉法人では特別養護老人ホーム「敬生園」、養護老人ホーム「敬心園」、障害者支援施設「敬愛園」、敬愛園デイサービスセンター、旭川市障害者総合相談支援センター「あそ~と」も運営している。
 初代の元一医師が1961年に新築した森山病院は旭川初の大型ビルディング病院として話題になったというが、今回森山理事長が手掛けるウェルネスセンターも旭川では初の試みになる。中核となる森山病院の新築移転を期にどのような医療を提供していくのか。森山理事長の語りに耳を傾けてみよう。
「私の父は、今から60年も前の1960年から健康・医療・福祉が三位一体となった総合的医療構想を打ち出していました。今でこそ多くの医療機関が標榜するようになりましたが、当時はなかなか理解されなかったものです。
 傘下の森山メモリアル病院は今年で開設20周年を迎えます。実はこの病院は、父が1956年に全国初のリハビリ専門病院として開業した旭町分院がルーツ。しかし当時、病院機能を急性期と慢性期に分化するのは好ましくないとかで国から指導され、閉院を余儀なくされた経緯があります。
 健康・医療・福祉の三位一体化を提唱し、急性期と慢性期のリハビリを担う施設の必要性を訴えた先駆者の気概を忘れずにいたい。そんな気持ちから復活させたのが森山メモリアル病院です。今回の新築移転でも父が構想した三位一体のトータルヘルスケアを市民に提供していきたい。我々が進むべき道は以前から決まっていました。これは大変ありがたいことだと思っています」
 その森山メモリアル病院と森山病院のリハビリ部門には理学療法士や作業療法士、言語療法士ら専門職130人が働く。訪問リハビリに資格を持つ専門職が赴くのも法人ならではの強みだという。
「2年後には旭川ウェルネスセンター全体が完成し、民間企業とのコラボレーションによる事業も始動します。新型コロナの感染拡大で不透明感はありますが、こんな時代だからこそ予防医学にも力を入れなくてはならない。従来の健康診断に加え、元気な人にも体力測定や健康診断で病気のリスクを予測し、そのリスクを食事や運動で減らす啓発活動を行ないたい。その実践の場として先述した健康食レストランやフィットネスクラブがあるのです」
 スポーツ医学の専門外来の開設も計画しており、先述の「ヴォレアス」と連携しながらケガや病気になりにくい体づくりを考えていく。
「ひと昔前までスポーツ界は根性論に負う部分がありました。それゆえ不慮の事故やケガで選手生命を失う人も多く、結果的に予防医学も遅れていた。予防医学とスポーツ医学は密接に結びついているので、その先駆けとなるように実績を積んでいきたい。その点、ヴォレアスの選手たちは日頃からケガや病気をしない体づくりを行なっており、ケガをしても早く回復しています。その手始めとして選手たちの取り組みを実践してもらうことも考えています。健康食レストランがオープンしたら彼らが摂っている食事をそこで提供してもらうプランも立てています」
 

1階から2階にかけて開放感ある造り

リハビリ部門も充実した(2階)

MORIYAMAホールがある8階からの眺め

“健康時代”に対応する体制を整えた森山理事長 (もりやま・りょう)1954年旭川市出身。旭川北高、杏林大学医学部卒業。旭川医科大整形外科、札幌医科大麻酔科、旭川赤十字病院を経て85年に医療法人元生会森山病院理事長に就任。北海道病院協会理事、旭川日英協会会長、FMりべーる(旭川シティネットワーク)代表取締役社長。66歳

1階から2階にかけて開放感ある造り

リハビリ部門も充実した(2階)

MORIYAMAホールがある8階からの眺め

 
 移転で新たな時代へ前進

 
 地域医療にも力を入れていく。さる11月初旬、森山病院は同じ上川管内にある和寒町との間で「地域医療の充実及び推進に関する包括連携協定」を締結。双方が連携し地域医療の充実と推進を図り、今後は救急医療体制の充実、災害時の医療供給体制、介護施設などへの医療提供、町民の健康維持推進について協力していく。
 同様の協定は同管内の剣淵町とも結んでいる。すでに和寒、剣淵の両町では法人の理学療法士が現地で寝たきりにならないための指導を行なっており、2年前から近隣の幌加内町でも外来応援のための医師派遣にも取り組んでいる。「近隣町村と連携しながら地域医療に関しては一定の役割を果たしていると自負しています。こうした自治体の皆さんは住民が健康でなければ財政が圧迫されるので、予防医学に力を入れる必要に迫られている。車で1時間程度の近隣地域から救急患者を当院で受け入れることも多く、急性期の機能も充実させつつ住民の健康教育も担っていきたい」と森山理事長は力を込める。
 人口30万人余りの旭川には旭川医科大学病院や市立旭川病院、赤十字旭川病院など公的な医療機関が5つもある。医療インフラが整備されていると言えば耳ざわりはいいが、医療費の削減が問われる中で公的病院が患者を奪い合う現状を森山理事長はどう見ているのか。
「基本的には、公的病院は民間病院ができない最先端・高度医療に力を入れ、民間病院は地域のプライマリケア(総合・初期診療)を担うべきだと思います。その中で病気を未然に防ぐ予防医学に力を入れていくのが我々、森山病院です。旭川中心部のシンボルゾーンへ移転新築した今回のオープンを踏まえ、父が掲げた夢を実現させていきたい」
「予防医学」を掲げ、JR旭川駅周辺の北彩都地区を拠点に新たな時代に入った森山病院。「健康都市・旭川」の創出に期待していきたい。
 



社会医療法人元生会 森山病院
旭川市宮前2条1丁目1番6号
TEL:0166-45-2020

遅れる移転計画
課題山積み北海道医療大の北広島移転

厚真の砂利採取場で起きた産廃不法投棄問題を追う

江差パワハラ死問題で交渉決裂
道「因果関係」否定貫く

つしま医療福祉グループ 「ノテ幸栄の里」が新築移転
地域包括ケアの拠点として在宅生活を支援

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