札幌心臓血管クリニックで注目の失神外来がスタート
原因を探り〝隠れ循環器患者〟を発見

2020年9月号

「失神という症状を軽く見てはいけない」と話す北井医師

(きたい・たかゆき)1982年兵庫県出身。2007年3月防衛医科大学校卒業。同大学校病院自衛隊中央病院、自衛隊札幌病院などを経て16年から札幌心臓血管クリニック循環器内科勤務。日本内科学会認定内科医、日本循環器学会循環器専門医。38歳

Medical Report

循環器分野における全国屈指の治療拠点として知られる医療法人札幌ハートセンター札幌心臓血管クリニック(藤田勉理事長/東区・85床)で8月1日、「失神外来」がスタートした。失神の原因に心臓の病気が隠れているケースが少なくないためだ。この外来を担当する北井敬之医師は「不整脈などによる突然死の前段階として失神の症状が現れる場合もある。予防のためにも多くの人に利用してもらいたい」と話している。(7月29日取材)

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失神は根性とは無関係

 
 失神は脳の血流が低下し6~8秒間意識を失い姿勢を保持できなくなる症状で、すぐに意識が戻るため安易に考えられがちだ。だが、倒れた際に骨折や打撲などの外傷を負うケースもあり、命に関わる心臓の疾患を原因とする失神も少なくない。北井医師は失神外来開設の意義を次のように説明する。
「車の運転中に失神し事故を起こす人の中には、不整脈で心臓が一時的に止まったというケースもありますが、失神患者の多くは最初に脳神経外科や整形外科を受診するため循環器病院までアクセスできないことが危惧されます。私は心臓病を原因とする失神患者を多く診てきたので、以前から専門外来の必要性を感じていました」
 循環器分野が対応する頻度の高い失神は3つある。起立性低血圧による失神、自立神経の調節障害による失神(反射性失神)、そして心臓病が原因の失神(心原性失神)だ。
 寝ている状態から急に起き上った時に血圧が低下して意識を失うのが起立性低血圧による失神だ。自立神経の調節障害による失神は、朝礼などで長時間立っている時に起こることが多い。咳や排便・排尿後、首を圧迫した後などに血圧が急に低下し失神することもある。
 問題の心原性失神は脈が極端に速くなったり遅くなったりすることで脳の血流が低下、脳貧血の状態になり一時的に意識を失うもの。命にかかわるような重症の弁膜症や心筋症、大動脈解離の発症に伴い失神することもある。
「当病院で診た患者では自立神経の調節障害で意識を失った人が多い。次いで多いのが不整脈。心臓の大動脈の弁が非常に狭く、血液を十分に頭に送り出せずに失神するケースもありました。外来で心原性失神と診断が付けば私たちが治療し、てんかんなどの意識障害が疑われるケースは脳神経外科などと連携を取り対応していきます」(北井医師・以下同)
 失神外来は毎週土曜日、完全予約制で行なう。循環器内科の北井医師と森田純次医師の2人が担当し、失神の原因を特定していく。
 検査は、心原性かどうかを判断するため心電図、レントゲン撮影、心エコー検査、血液検査といった一般的なメニューに加え、冠動脈と心臓の状態をCTやMRIでチェックする。ただ不整脈はいつ起きるかは予測が難しく、クリニックで心電図をとっても異常が認められないことが多いという。
「不整脈は“現行犯逮捕”が何より大事で、私としてはその際の心電図を何としてもキャッチしたい。このため24時間あるいは1週間貼り付けることが可能なホルター心電図で測定し、それでも検出されない場合は植込み型の心電図を使い、常時記録する方法も取ります」
 失神の原因が不整脈だと判明し、脈が非常に遅くなる場合はペースメーカーなどの処置、逆に脈が速すぎる場合は薬で抑えるかカテーテル治療を行なう。弁膜症や心筋梗塞、大動脈に原因がある時は、それぞれの専門医が対応するので安心だ。
 外来を担当する北井医師は2007年に埼玉県の防衛医科大学校を卒業。自衛隊病院の循環器内科で勤務した経験を持つ。
 自衛隊病院時代では、神経の調節障害で何度も失神するオリンピック選手を診たことがあった。この選手は心電図をとると正常だった。しかし、神経反射性失神を調べるヘッドアップチルト検査を行なうと、長時間の立位時に交換神経のバランスが悪くなり失神することが分かった。
「根性がないから失神するというのは大間違いです。失神の原因を突き止めるだけでも患者さんは安心する。失神がきっかけで不登校になる子供もおり、この外来は大人だけでなくそうした人の力にもなりたい」
 失神の原因を突き止めることは、心臓の状態を網羅的に調べることにもなる。今回の外来開設が、ひとりでも多くの“隠れ循環器患者”の発見につながることを期待したい。
 

カテーテルによる不整脈治療を施す北井医師

カテーテルによる不整脈治療を施す北井医師

 


医療法人札幌ハートセンター
札幌心臓血管クリニック
札幌市東区北49条東16丁目8-1
TEL:011-784-7847

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