時計台記念病院の新トップに就任した寳金清博医師に訊く
カレス新病院 開業を経験で後押し「もやもや病」などの治療にも全力

2019年5月号

脳神経外科領域の最新治療について説明する寳金院長(4月2日午前、カレスビルの院長室で)

(ほうきん・きよひろ)札幌市出身。1979 年北海道大学医学部卒業。86 年米国カリフォルニア大学デービス校留学。96 年米国スタンフォード大学、英国王立神経研究所留学。2001 年札幌医科大学医学部脳神経外科教授。10 年北大大学院医学研究科脳神経外科分野教授、北大病院副院長。13 年北大病院院長。17 年北大副学長。19 年4月カレスサッポロ時計台記念病院院長に就任。日本脳神経外科学会専門医・理事。日本脳卒中学会専門医・理事。99 年日本脳卒中の外科学会賞、13 年美原賞、18 年伊藤太郎学術賞などを受賞。64 歳

Medical Report

4月1日、社会医療法人社団カレスサッポロ(札幌市・大城辰美理事長)が運営する時計台記念病院(中央区・250 床)の新院長に前北大病院院長の脳神経外科医・寳金清博氏(63)が就任した。道内医療界の重鎮の一人で難病「もやもや病」の権威として知られる寳金氏は、研究・臨床の第一線で活躍しながら大学病院の運営にも力を注いできた人物。今後、新病院建設を目指すカレスサッポロにとってこのうえない人材を得た形となった。就任まもない寳金院長を訪ね、今後の抱負と脳神経外科分野の最新治療を訊いた。
 

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時計台記念病院の新トップ“寳金清博医師”に訊く

脳外科治療と大学病院経営 2本柱で過ごした医療人生

 ──元号が平成から令和に変わる節目に時計台記念病院の院長に就任されました。軸足を官から民へ移したこともあり、感慨もひとしおなのでは。
 寳金 ご承知のように、我が国では大学経営が全体的に厳しくなっており、大学病院も従来の護送船団方式では立ち行かない時代になっています。高度先進医療の提供だけでなく財務体質を強化することが必要不可欠。そういう意味では規模は違っても大学病院と民間病院にさほど違いはなく、官から民へという感覚はあまりありません。
 ──これまでカレスサッポロとのご縁は。
 寳金 旧敬和会が運営していた時計台病院の頃に北大から脳外科医を派遣していた時代があり、私もよく手術に来たものです。
 前理事長の西村昭男先生(故人)は、彼が北大助教授の頃から知っていました。当時、私はまだ医学生でしたが、エネルギーに満ちた姿に強い印象を受けました。その後、私が札幌医科大の教授に転じ附属病院の副院長を務めていた頃は、先生の講演会などで度々お会いする機会があり、よく声をかけていただきました。子弟関係ではありませんでしたが、先生の新しい考えには大いに啓発されたものです。
 ──大城理事長から院長就任のオファーがあったと聞いています。引き受けた理由をお聞かせください。
 寳金 基本的に民間病院の院長は内部の人材から選ぶべきだと思います。ただ今回は、カレスサッポロとして新病院を建設するという大きなテーマがありました。時計台記念病院、北光記念病院はともに老朽化が進み、建て替えは喫急の課題。また両病院は関連する大学病院もそれぞれ違い、組織としての風土も異なっています。
 こういう状況の中で、私のように北大と札幌医科大の両方で長年勤務を経験してきた第三者が入ることでお手伝いできることがあればと思い、こちらに来ることを決めました。北大は教授の任期を1年残して退職しましたが、大学病院の院長を6年務めたので責任は果たしたと思います。
 ──新病院の建設地と今後のスケジュールは。
 寳金 具体的な流れはまだ決まっていないようですが、建設候補地はJR札幌駅周辺と聞いています。近い将来、北海道新幹線が札幌まで延伸したら、あのエリアのヒトとモノの動きは格段と良くなるでしょう。
 ──新病院に何を期待しますか。
 寳金 私が居た大学病院はいわば巨大な戦艦であり教育施設でもあります。民間としてはブランド性の高い病院を目指し、道内はもとより道外、海外からも患者さんを呼び込むことが地域医療への貢献と考えています。
 札幌市内の狭い範囲の中でパイを奪い合っても仕方がない。そういう意味で今回のカレスサッポロの新病院建設は、大きなチャレンジになるのではないでしょうか。
 

新事業の展開に向け頼もしい相棒を得た大城理事長

循環器分野の急性期治療で定評のある北光記念病院(札幌市東区)

「もやもや病」患者の脳内血管造影画像

新事業の展開に向け頼もしい相棒を得た大城理事長

循環器分野の急性期治療で定評のある北光記念病院(札幌市東区)

「もやもや病」患者の脳内血管造影画像

循環器、高齢化対策、がん治療 これから必要になるスピード感

 ──よりグローバルに開かれた医療機関というイメージですね。時計台記念病院は総合病院、そして北光記念病院は循環器に特化した急性期病院という位置付けです。新病院ではどのようなところに力を入れたいとお考えですか。
 寳金 東京の聖路加国際病院のように世界に通用する総合病院を目指したいところですが、診療科は、カレスサッポロとしての強みを生かすならやはり循環器分野が大きな柱になるでしょう。私の専門領域である脳神経外科と関連しますが、認知症など高齢化の問題にも対応していくことも求められます。そして、大きなポイントとしては、がん治療のレベルを上げることだと考えています。
 この分野は、陽子線といった新しい放射線治療のほか分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤などの新薬も開発され、まさに日進月歩の感があります。
 新しい免疫療法「CAR‐T細胞療法」も最近保険収載されました。この免疫療法は、がん患者からT細胞と呼ばれる免疫細胞を取り出し、攻撃力の強い遺伝子を組み込んだものを培養。それを体内に戻すことでがん細胞を攻撃します。
 今、道内で細胞を使った治療ができるのは北大病院や札幌医科大附属病院がメインですが、細胞療法は将来的にスタンダードな医療に必ずなっていきます。今後のがん治療は、医療者側もスピード感を持って取り組まなくてはなりません。
 ──脳神経外科医として時計台記念病院での活動は。
 寳金 臨床は非常に大事なので、北大時代も外来と手術を担当していました。こちらも脳神経外科は今後強化しなければならない分野ということもあり、週に2日外来を担当しています。
 ──寳金院長は「もやもや病」の権威として知られています。これまでどのような手術を手がけてきましたか。
 寳金 脳動脈瘤など脳卒中の外科治療でクリッピングやバイパス手術を多く行なってきました。もうひとつがご指摘の難病に指定されている「もやもや病」の外科治療です。この疾患は難病の中では比較的患者数が多く、発症年齢は5歳と40歳前後に2つのピークがあります。
 

難病脳疾患「もやもや病」の外科治療を研究し発展改良

 ──具体的にどのような疾患なのでしょうか。
 寳金 日本人に多い病気で、脳の血管が細くなるため血管全体が詰まり脳の血流が不足し脳梗塞を引き起こしやすくなる。原因はまだよくわかっていません。子供に多く発症し、男女比では1対2で女性の方が多い。血管造影で脳内を撮影すると細くなった血管がタバコの煙のようなもやもやとした状態に映りますが、これは血流を補うために細い血管が発達したものです。
 1960年代に東北大学脳神経外科の故・鈴木次郎教授がこの病気を見つけ命名しました。ほとんどの病名は日本語に訳されたものですが、「もやもや病」は日本語のオリジナルが病名になった数少ない病気のひとつで、国際的にも「もやもや」で通じます。
 ──患者の症状としては。
 寳金 ラーメンを「フーフー」して食べたりした時などに半身がしびれたり、言葉が出なくなったりします。健康の人でもたくさん息を吸ったり吐いたりすると脳の血管が縮みますが、もやもや病の人は脱力や言葉の障害が出ます。
 ──では、激しい運動などはもってのほか。
 寳金 運動は大丈夫なんです。運動時には二酸化炭素が体内に溜まるので、それを出して酸素を取り入れるために息を吸ったり吐いたりします。このためもやもや病の人は運動をしただけでは症状は出ません。
 逆に運動をしていないのに、息を「スーハー」すると二酸化炭素だけが極端に減ってしまうため具合が悪くなる。平常時における過呼吸や泣いたりした時に症状が出やすくなるのです。
 ──治療法は。
 寳金 血流の不足した血管に頭の筋肉や頭皮の血管を繋ぐことで血流を増やすバイパス手術が有効です。私は脳神経外科医の上山博康先生(禎心会脳疾患研究所所長)から指導を受け、この術式を発展改良しました。
 ──道内で、この病気の専門外来と言えば。
 寳金 道内では北大病院の患者が一番多い。民間病院では上山先生がおられる札幌禎心会病院、そして、私が専門外来を担当する時計台記念病院でも今後、多くの患者さんを診療したいと思います。
 ──脳神経外科の分野では再生医療の研究も進んでいます。
 寳金 こちらにも期待したいところです。再生医療分野では札幌医科大が大手医療機器のニプロと共同開発した治療用の幹細胞「ステミラック」があります。これは、患者さんから採取した骨髄液を培養し有効な細胞を選んで静脈に注射する治療法。2013年に臨床実験が始まり今年度中から保険診療が認められました。
 一方、北大病院では脳の損傷した部分に幹細胞を注射し脳内に直接移植する治験を始めています。
 適応は今のところ脳梗塞で、狙った位置にミリ単位で針を刺し幹細胞を送り込みます。損傷した部分に直接幹細胞を注射するので、より早く効果的に脳細胞が再生することが見込める。
 幹細胞の脳内移植はまだ治験の段階ですが、実用化できるようになったら新病院にも細胞治療センターを設置したいと念願しています。
 ──大きな可能性がある治療法ですね。
 寳金 ただ、再生医療や新薬の開発に関しては、安全面で万全を期すことも求められます。新薬の開発について、日本では科学的根拠に基づき慎重に行なってきましたが、最近の流れを見ると一概にそうとは言えない。また我が国は再生医療の分野で世界的にイニシアチブを握るべく前のめりになっており、欧米からは「日本は減速すべきだ」との批判が出ています。
 医療にとって大事なのは、患者さんのために安全性を担保しながら可能性を広げていくことです。
 ──本日はありがとうございました。カレスサッポロでの今後の活躍に期待します。
 


社会医療法人 社団 カレスサッポロ
時計台記念病院
札幌市中央区北1条東1丁目2-3
TEL:011-251-1221

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