アスリートをサポートする「北海道整形外科記念病院」
チームワークの良さが光る“ スポーツ障害”の治療拠点

2019年11月号

加藤貞利理事長(左)とリハビリテーション科の神成透科長

Medical Report

国内を熱狂させているラグビーW杯日本大会、そして来年に東京五輪の開催を控える中でスポーツ熱が高まっている。だが、その一方で懸念されるのが競技中のけが、そして過度の練習で特定の部位が故障するスポーツ障害だ。このような中で以前から「スポーツ整形・リハビリテーションセンター」を開設し、アスリートたちをサポートしているのが医療法人北海道整形外科記念病院(札幌市豊平区・225 床)である。国内有数の整形外科専門病院として知られ、プロ選手やスポーツ愛好家からも頼りにされている同病院の加藤貞利理事長・院長とリハビリの責任者にスポーツ障害の概要と治療について訊いた(9月27日取材)。
 

「運動のやり過ぎ」で起きる中高年以降のスポーツ障害

 
 いわゆる「スポーツ整形」が担う分野には、運動中に明らかな外力が加わったことによる捻挫や骨折、いわゆる肉離れ、靭帯損傷などの「スポーツ外傷」と過度な練習や誤ったフォームなどで関節や靭帯、腱、骨などに負荷がかかることで痛みが慢性化する「スポーツ障害」がある。
 健康志向の高まりや来年夏の東京オリンピック・パラリンピックが追い風となり、スポーツを始める人が増えている昨今だが、北海道整形外科記念病院の加藤貞利理事長は運動のし過ぎについて次のように警鐘を鳴らす。
「適度な運動は心肺機能や筋力の維持・強化に役立ちますが、過度なトレーニングの繰り返しはプロ、アマを問わずスポーツ障害の原因にもなります。特にプロ級で活動していた人は、中高年になってから関節の軟骨がすり減る変形性関節症などの疾患に苦しむケースが多いのです」
 特に注意したいのは発育期の子供だ。発育期は骨と筋肉の成長速度が異なり、成長した骨を追いかける形で筋肉がつき身体がつくられていく。筋肉が満足に形成されていない中で過度の負荷をかけると、骨や軟骨が損傷を受けることになる。
 よく耳にする「野球ひじ」は発育期の子供がかかりやすいスポーツ障害のひとつで、ひじの関節運動を繰り返すことで骨の軟骨が損傷されるために起こる。初期の段階で発見し安静にすれば治ることもあるが、ひじに負担をかけるフォームを続けると再発することもある。こちらは、症状が進むと手術が必要になってくる。
 このほか発育期の子供がかかりやすいスポーツ障害として「オスグッド病」、代表的なスポーツ障害として「シンスプリント」などがある。
 11~14歳にかけて発症する率が高いオスグッド病は「成長痛」とも呼ばれ、サッカーやバスケットなどジャンプやボールを蹴るスポーツで多い。ジャンプやキックなどの動作で太もも前部の筋肉・大腿四頭筋が収縮することで「お皿」と呼ばれる膝蓋骨や脛骨に圧力がかかる。これが長期間繰り返されることで、脛骨に炎症を起こしたり骨が変形し痛みを生じる。この場合は、練習量を減らしたり初期の段階での休養が早期復帰につながる。
 肉離れは正式には「筋挫傷」と呼ばれ、野球やサッカーなどの競技でダッシュやジャンプの着地をした時に太ももやふくらはぎに強い痛みを感じる。筋肉の急激な収縮により筋肉を構成する線維が切れたり、筋肉を包む筋膜が破れたりして起こる。発症後は、直ちに患部に氷嚢などを当て冷やすクーリングと圧迫包帯を行ない、MRI検査で重症度の診断をつけた後にストレッチングなどのリハビリに取り組む必要がある。
 シンスプリントはマラソン選手などに多いすねの痛み(過労性脛部痛)だ。すねの内側に発症し、全てのスポーツ選手の下肢障害の60%を占めるというデータもある。
 練習量の多さや練習・試合施設の硬い地面、踵の外側がすり減った古い運動靴などのほか、ふくらはぎの筋線維の柔軟性の低下などが原因とされる。初期の疲労骨折と見分けるのが難しいため、診断にはMRIによる検査が必要になる場合がある。
 痛みが軽いうちはストレッチやクーリングで対処できるが、痛みを我慢して走り続けていると疲労骨折に繋がり、長期間運動を中止せざるを得なくなるので注意が必要だ。
 同病院では、このシンスプリントの痛みやアキレス腱炎・アキレス腱付着部炎、疲労骨折などに体外衝撃波(ドルニエ社製)を使った治療も導入している。
 体外衝撃波は元々腎臓結石の粉砕治療に使われていたが、近年は整形外科分野にも応用され、腱や靭帯付着部分の痛みの緩和に効果を上げている。痛みを感知する末梢神経の働きを弱くし、新生血管を誘導して組織の修復を促進すると考えられ、照射した直後から除痛効果がありその後の組織修復が特徴だという。
 欧米では低侵襲で安全な治療法としてスポーツ選手を中心に広まっており、アキレス腱炎など保存治療が有効でなければ手術しか選択肢のなかったスポーツ障害治療に期待が寄せられている。
 

(かとう・さだとし)1951 年岩手県盛岡市出身。77年北海道大学医学部卒業後、同大医学部整形外科入局。84年米国マイアミ大学医学部整形外科教室に留学。86年北海道整形外科記念病院勤務。92年副院長、2011年院長に就任。14年から現職。北海道社会保険柔道整復師施術療養費審査委員会委員長、北海道柔道整復師会附属北海道柔道整復専門学校長など役職多数。日本整形外科学会専門医、日本外科学会専門医。68歳

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スポーツマンに寄り添う治療とケアの体制を確立

 
 このような中で北海道整形外科記念病院では、けがなどの外傷を含むスポーツ障害の治療とリハビリに対応する「スポーツ整形・リハビリテーションセンター」を開設。この体制を支える院内には脊髄、上肢、下肢各分野の専門医17名が在籍しており、このうち7人が公益財団法人日本スポーツ協会(前日本体育協会)公認のスポーツドクターまたは日本整形外科学会認定のスポーツ医の資格を有している。
 術後の回復を担うリハビリテーション科も充実している。神成透科長をはじめ理学療法士は17人が在籍。スタッフを束ねる神成科長は日本スポーツ協会公認のアスレチックトレーナーという有資格者。スノーボード競技でオリンピック帯同経験もあり、選手の体のメンテナンスについて熟知している。
「道内のアイスホッケー実業団を始め高校のバレーボール部や女子硬式野球部にもトレーナーとして競技の際に同行させていただくこともあります」(神成科長)
 スポーツ整形の分野では、けがの治療はもとよりスポーツ障害を予防する体づくり、食事、睡眠、心理面のサポートも必要だ。これらをスポーツ医や理学療法士、アスレチックトレーナーなど専門性の高いスタッフが総合的にカバーしているのが同病院の「スポーツ整形・リハビリテーションセンター」といえる。
「スポーツ整形にも力を入れていますが、リハビリテーション科全体で見ると65歳以上の慢性疾患の患者さんが圧倒的に多い。そういう皆さんへ対応しながらスポーツ選手に対しては、リハビリで高いパフォーマンスを出すことが求められます」(神成科長)
 約400㎡の広さを有するリハビリテーションセンターでは医師と理学療法士が相談し、患者1人ひとりに合ったプログラムを作成し、リハビリを行なっている。
「リハビリは患者さんに負荷を強いるものなので、始める前の説明が大事になります。感じる負担が回復に有益であると分かれば我慢できるし、不安も払拭できます。丁寧に説明し納得して取り組むことが回復への近道だと思います」(神成科長)
 スポーツ障害の治療・リハビリに特化した医療を提供するという点では、アイスホッケーや野球、少林寺拳法、テニスなどスポーツを経験した医師や職員がいることも同院の強みのひとつだ。
 野球少年だった副院長の近藤真医師は新琴似リトルシニアリーグのチームドクターを務める。野球ひじの子供が治療に来ると、診察室でタオルを使ったフォームチェックを行ない、ひじに負担のかからない投げ方を指導することもあるという。
「野球ひじなどで治療を受けに来る子供は、スポーツを続けたい一心で通ってくる。専門病院としてその気持ちに最大限応えるのはもちろんですが、場合によっては将来に障害が出るから止めた方がいいという判断をせざるを得ない時もあります。
 スポーツにチャレンジしたいという気持ち、そして長い目で見たその子の人生。その両方を見据えて対応するのが本来の医師のあり方だと思います」(加藤理事長)
 北海道整形外科記念病院は、整形外科分野における国内の権威として知られた故・松野誠夫北大名誉教授が大学勤務時代に設立に奔走し、1978年に誕生。専門病院として上肢(肩周辺から手指)、下肢(太ももから足指)、脊椎(首から腰)、股関節(足の付け根)の4分野をはじめリウマチ、スポーツ外傷・スポーツ障害、骨粗鬆症まで各疾患別にきめ細かく対応しているのが特徴だ。毎月、道内を中心に6500人以上の外来患者が受診に訪れ、それぞれの分野に精通した専門医が連携しチーム医療に当たっている。年間約3300例の手術を手掛け、開院から41年を経て手術数は延べ約10万例に達しているという。

1階にある広々としたリハビリテーション室

多種多様のリハビリ機器を完備

 

1階にある広々としたリハビリテーション室

多種多様のリハビリ機器を完備

 

(かとう・さだとし)1951 年岩手県盛岡市出身。77年北海道大学医学部卒業後、同大医学部整形外科入局。84年米国マイアミ大学医学部整形外科教室に留学。86年北海道整形外科記念病院勤務。92年副院長、2011年院長に就任。14年から現職。北海道社会保険柔道整復師施術療養費審査委員会委員長、北海道柔道整復師会附属北海道柔道整復専門学校長など役職多数。日本整形外科学会専門医、日本外科学会専門医。68歳

手術とリハビリは車の両輪。医療の質を高めるチームワーク

 
 開院40年の節目である昨年18年4月には交通の便の良いJRタワーオフィスプラザさっぽろ8階(札幌市中央区)にサテライトクリニックも開院し、患者の利便性も高めた。
「整形外科において最も大事なのは、優れた手術です。いくらリハビリの技術が優秀でも手術自体が不完全なものであれば患者のリカバリーは望めません。反対に良い手術をしてもリハビリが悪ければ思うような効果が得られないものです
 そういう意味で手術とリハビリは地続きであって車の両輪のようなもの。ですから各分野のスペシャリストが互いに心から信頼し合って切磋琢磨することが、患者さんへ最善の医療を提供する事につながるのです。質の高い医療は、まさに職員同士のチームワークにかかっていると言っても過言ではありません」(加藤理事長)
 日頃から職員に「私たちは病院という船で一緒に仕事をしながら人生を旅している仲間です」と語りかけている加藤理事長。同病院のチームワークの良さがスポーツ整形の分野でも発揮されていることが実感できた今回の取材だった。



医療法人 北海道整形外科記念病院
札幌市豊平区平岸7条13丁目5-22
TEL:011-812-7001

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