「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」で札幌東徳洲会病院が最先端医療

2018年8月号

くにべ・いさむ
留萌管内遠別町出身。1993年旭川医科大学卒業。同大医局、日鋼記念病院、名寄市立病院などの耳鼻咽喉科勤務を経て2005年から08年まで米国・ヴァンダービルト大学に留学。15年から札幌東徳洲会病院耳鼻咽喉科に勤務し、16年に開設された耳鼻咽喉科・頭頸部外科の主任部長を務める。医学博士。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医・指導医。旭川医科大学非常勤講師。49歳

Medical Report
低侵襲でQOL改善の内視鏡手術聴力改善や甲状腺腫瘍にも対応

札幌圏の総合病院のひとつである医療法人徳洲会札幌東徳洲会病院(太田智之院長・325床)が聴力改善手術や甲状腺腫瘍手術などに対して内視鏡を導入し、大きな実績を上げている。これらの治療を担う同病院の耳鼻咽喉科・頭頸部外科では、さまざまな原因で声に障害を持った「音声障害」の専門的治療にも力を注いでおり、患者のQOL向上に向けた取り組みが高く評価されている。2年前から主任部長として耳鼻咽喉科・頭頸部外科を立ち上げ、これらの治療に取り組む國部勇医師に内視鏡手術の最前線を訊いた。(6月26日取材)

内視鏡下による耳科手術のイメージ

國部主任部長による内視鏡手術

耳・鼻・喉の疾患を広くカバー

 急性期や救急医療の拠点病院として知られる札幌東徳洲会病院に耳鼻咽喉科・頭頸部外科が開設されたのは、2年前の2016年。この立ち上げを任されたのが道内の病院や米国留学などで研鑽を積んできた國部勇医師だ。
 診療科開設以後、地元をはじめ周辺医療機関からの紹介患者が右肩上がりで増え、今では平日の外来患者数は40~50人。手術は聴力改善手術、内視鏡下鼻副鼻腔手術、咽喉頭手術、頭頸部外科手術など多岐にわたり、件数は昨年度で延べ299件を数える。
 外科領域をはじめとして、低侵襲な内視鏡手術は医療技術の進歩とともに徐々に広まってきた。耳鼻咽喉科領域でも20年ほど前から鼻の穴に内視鏡や鉗子を挿入して行なう内視鏡下鼻副鼻腔手術がスタンダードな治療法になった。それ以前は副鼻腔炎(蓄膿症)に対する手術といえば、局所麻酔で歯肉付近を切開し、上顎の骨を削って内部の炎症を起こした粘膜を全て摘出する大掛かりなものだった。
「内視鏡による手術は、低侵襲で患者の回復が早い。肉眼では見えにくい場所なども拡大してモニターに映しながら治療できるので、研修医や学生の指導に役立ち、医療者側にとってもメリットがあります」(國部医師、以下同)
 その一方、慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎など耳の病気に対する内視鏡下耳科手術は、最近になり普及してきた比較的新しい手術法だ。まだ実施している施設はそれほど多くない中で、同病院は札幌市内で耳の内視鏡手術を行なう数少ない医療機関のひとつとなっている。
 耳の病気の中でも、真珠腫性中耳炎はケラチンが溜まった皮膚の袋(真珠腫)が周辺の骨や組織を破壊し、袋が大きくなると顔面神経麻痺や激しいめまいなど深刻な合併症を併発するなどやっかいな病気だ。治療は耳の後ろや前を切り、病変周辺の骨を顕微鏡下で削って真珠腫を摘出する手術が一般的。それに加えて真珠腫により聴力が低下している場合には、「耳小骨再建術」などの聴力改善手術も必要になる。約1.2週間の入院が必要で、傷が残り耳の痺れなども続く場合がある。
 これに対して、同科では耳の穴から内視鏡を挿入し、真珠腫を取り除いた上で鼓膜や耳小骨の再建を行なう。入院は2泊3日で済む。
 頭頸部外科の分野では、昨年4月に保険適用となった甲状腺良性腫瘍やバセドウ病に対する内視鏡手術にも積極的に取り組んでいる。一般の手術では、首元を5センチほど切開するが、この病気は女性に多く、人目に見える場所に傷が残ることが課題となっていた。
 一方、内視鏡手術では鎖骨の下を2センチほど切開し、モニターを見ながら器具を操作し腫瘍を切除する。首に傷が残らないのがメリットだが、手術には執刀経験などに厳しい条件があり、認定を受けた医師でなければ治療を行なうことができない。札幌市内で実施している医療機関は同病院と札幌徳洲会病院(白石区)の2施設だけだ。
「今年度から初期の甲状腺がんにも保険が適用されました。甲状腺疾患は比較的若い女性に多いことから、首に傷の残らない内視鏡手術は有効な選択肢となります」
 

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けいれん性発声障害にも卓効

「のどの病気と言えば、声帯ポリープや喉頭がんを思い浮かべる方も多いでしょう。このような疾患に対する手術治療や放射線治療は、耳鼻咽喉科を標榜する医療機関で一般的に行なわれています。しかし、声帯麻痺になった患者さんの声の機能を取り戻す治療は、道内では限られた施設でしか行なわれていません」
 こう話す國部医師は、道内で声帯麻痺などの発声障害の治療に取り組む数少ない専門医の一人。声帯麻痺を引き起こす原因はさまざまで、肺がんや甲状腺がん、食道がん、脳梗塞などの後遺症として発現する場合も。症状の多くは、片方の声帯が動かず、声門が閉じなくなったために起きる「声枯れ」だ。
 治療は「甲状軟骨形成術」と呼ばれる保険適用の術式で行なう。首の皮膚を数センチほど切開し、咽頭全体を覆う甲状軟骨を手術することで声帯の位置や緊張度を変えていく。手術は局所麻酔下で行ない、術中は患者に声を出してもらい調節しながら進める。
 甲状軟骨形成術は音声障害の権威として知られる京大名誉教授・一色信彦氏が開発した術式だ。一色氏は、声帯が自分の意識とは関係なくけいれん状に収縮することで声が詰まったり途切れる「けいれん性発声障害」の治療法も開発した。甲状軟骨を縦に切開し声帯を広げたままチタンブリッジで固定する方法で、この場合も術中に患者の声を聞きながら調整する。
 けいれん性発声障害は、手指などが思い通りに動かなくなる神経難病「ジストニア」に似ていることから「喉のジストニア」とも呼ばれている。原因が不明なことから、ストレスやヒステリーなどと放置されることが多かった。
 ただ、チタンブリッジを用いた手術を保険診療で行なうことのできる医療機関は、執刀要件を満たす医師がまだ少なく施設基準も厳しいことから全国でも限定的だ。國部医師は、チタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術の認定資格を取るため、かねてから講習会などに参加。8月には治療を実施できる運びだという。「一般的に米国ではけいれん性発声障害の治療には、ボツリヌス毒素製剤の注射が第一に行なわれています。しかし、効果は一時的であるうえに日本では承認はされていません。その点、日本発の治療法であるチタンブリッジを用いた術式は低侵襲で長く予後を保つことができます」


 札幌東徳洲会病院で診療科を立ち上げて3年目に入った國部医師は、「まだ発展途上ですが、講演会などで内視鏡手術のメリットを広く知ってもらい、患者さんに喜んでもらうことが何より。声を出してもらいながら喉の手術をするように、耳の手術も局所麻酔で『どう、聞こえるようになった?』と患者さんに話しかけながら治療することが次の目標です」と笑顔を見せる。



医療法人徳洲会 札幌東徳洲会病院
札幌市中央区南3条西6丁目4の2
TEL:札幌市東区北33条東14丁目3-1

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