高齢者の困りごと全般にワンストップで対応するシニアライフのよろず相談所

2018年7月号

こつがい・かずひろ
1959年札幌市出身。秋田県立秋田高校卒、慶応大学法学部法律学科卒業。東京での会社員、自営業を経て49歳の時に母の介護のため単身札幌へ戻る。介護と仕事の両立、男性介護問題、高齢者の住まいの問題などに取り組み、2013年9月にNPO法人「札幌高齢者住まいのサポートセンター」、14年1月に一般社団法人「シニアライフサポート協会」を立ち上げ代表理事を務める。「北海道男性介護者と支援者のつどい」代表、「札幌認知症の人と家族の会」会員、朝日新聞朝刊に「向老学」(2014年6月~15年9月)を連載、FMしろいし・毎週火曜日「介護相談」レギュラー出演。テレビ、講演、セミナー、イベントなどにゲスト出演多数。札幌市在住。59歳

ZOOM UP
一般社団法人「シニアライフサポート協会」
NPO法人「札幌高齢者住まいのサポートセンター」
代表理事 小番一弘さん

「元気なシニアがシニアを支える」をキーワードに、高齢者の悩みや困りごとにワンストップで応じる札幌市の一般社団法人「シニアライフサポート協会」。代表理事を務める小番一弘さん(59)は、母親の介護に向き合ってきた体験から高齢者向けの住宅選びから生活に関わるさまざまな問題解決にチャレンジしてきた。特に3年前に開講した「シニアライフカウンセラー養成講座」はこれまでに約4000人が受講。4人に1人が高齢者という社会を迎える中、シニアを支えるエキスパートしての活躍が期待されている。小番さんを訪ね、シニアを支える新たなビジネスの方向性や未来像について話を伺った。(聞き手=本誌編集長・工藤年泰)

当時者として知った介護の実情

 ──シニアライフサポート協会を設立した経緯は。
 小番 認知症になった母の介護をするため、49歳の時に東京を引き揚げ、単身札幌に戻りました。ヘルパーの資格を取り、自宅での介護の傍ら高齢者住宅で1年間、夜勤の仕事に携わり、認知症の対応に困っている人はたくさんいるのだと実感しました。国は介護離職ゼロを掲げていますが、実際問題として介護をしながら仕事を続けることはできません。だから、皆さん介護離職するわけです。幸運なことに、私が勤務した高齢者住宅は自宅に近く、夜間の仕事でしたので、介護と両立することができましたが。
 その後、ある高齢者住宅を手伝うことになり、費用やサービス面で入居希望者と施設側のマッチングが上手くいっていないことが分かりました。そこで、2013年に当協会の母体となるNPO法人「札幌高齢者住まいのサポートセンター」を立ち上げたのです。しかし、半年もしないうちに住まいのことだけでなく、引っ越しや不用品処分、身元保証など多岐に亘る相談が寄せられるようになり、14年1月にこれらの問題にワンストップで応じるシニアライフサポート協会を開設したというのがこれまでの流れです。
 ──協会ではどのような事業を。
 小番 シニアライフ相談サロンを設け、高齢者住宅への住み替えや引っ越し・不用品処分に関する相談。高齢者住宅入居の際の身元保証・後見人の相談、不動産処分、遺言・相続、葬式・お墓など高齢者のさまざまな困りごとや相談に無料で応じています。また、高齢者向け住宅・介護事業の開業支援、運営支援、集客支援などのコンサルティング業務や当協会独自の認定資格「シニアライフカウンセラー養成講座」も開講しています。

創成川通り沿いにある「シニアライフサポート協会」(札幌市中央区)

高齢者の相談に乗る小番代表

ザイ・コンファーム社・小林健治氏の貸金業法疑惑を追う

道警不祥事から考える〈26〉

札幌佐藤病院グループの「しんふぉに~28」

札幌禎心会病院「陽子線治療センター」

高まるシニアサポートへの関心

 ──養成講座を開始した目的と講座の内容は。
 小番 講座を開設したのは、高齢者が抱えるさまざまな困りごとを総合的にサポートし解決に導いていくための人材育成が目的です。講座では住まいから介護保険制度、健康・医療、見守り・後見制度、相続・遺言、生活支援、老後資金・財産管理・税金、葬儀・墓、エンディングノート、コミュニケーション能力など多彩な知識と実践力を身に付けることができます。初級から中級、上級資格へとステップアップでき、講師は地元の新聞社や札幌商工会議所、札幌弁護士会、札幌市社会福祉協議会など後援団体から紹介いただいた各分野の専門家が務めています。
 ──現在までの受講者数はどれくらいですか。
 小番 14年10月の開講以来約4000人が受講しています。最初の2年は札幌で実施していましたが、現在は旭川、帯広、釧路、函館、東京、大阪、神戸、福岡などでも開講しています。受講するきっかけは、自分や家族のために介護などに関する勉強をしたい。あるいは、地域や職場、町内会、老人ホームなどに関わっている人たちに問題や悩みごとの解決方法をアドバイスしたいというケースが多いです。
 ──受講する年齢層と講座終了後の活躍の場を教えてください。
 小番 当協会は「元気なシニアがシニアを支える」をキーワードにしており、受講者は40代から70代までと幅広い年齢層になっています。受講者の中には、シニアライフ相談サロンを自分の地元で運営したいという人もおり、協会はその展開を後押ししています。
 札幌市内だけで2000人以上の受講者がいるので、10区全部に相談サロンを開設する計画で、現在、各地区でカウンセラー認定者の集いを開催しています。
 ──よろず相談に対応してくれる場所が身近にあると心強いですね。
 小番 当協会はニーズがあればどのような相談にも対応します。住み替えから人生の仕舞い方に至るまでのさまざまな心配や困りごとを、プロの相談員に安心して相談できる上、最終的には協会所有の永大供養墓もあるので生涯安心サポートが可能です。
 ──高齢者の悩みは尽きないですが、ビジネスとしての収支はどのようになっているのですか。
 小番 活動内容が社会貢献として認められ、札幌市や北広島市から助成金事業を受託したり、利用者を紹介した高齢者施設などから運営費として会費をいただいています。行政や地域包括支援センターなどの公的機関が高齢者や家族の相談に乗っていますが、業務が膨大で細かいところに手が回らないため、現実問題として難しい側面があります。来るべき地域包括ケアシステムでは医療、福祉の専門職だけではなく、地域のボランティアや町内会、NPOなども社会資源とされており、我々の団体やシニアライフカウンセラーもその一翼を担うことになります。このように社会資源が増えていけば、地域に目が届くようになり孤独死などの問題も減ってくるのではないでしょうか。
 ──シニアの困りごとに応じる同様の団体は全国にもあるのですか。
 小番 ワンストップの相談窓口はほとんどないのが現状です。こうしたこともあり、最近は東京や九州などからもワンストップでシニアのサポートをしたいという企業やNPOが視察に訪れるようになりました。例えば、保険代理店を営み今は順調だが、ネット保険の台頭などで将来の見通しがつかない。士業や葬儀業も競争が厳しいので、本業のみだけでなく、間口を広げ新たなビジネスに結びつける可能性を模索しているのだと思います。
 ──小番さんご自身も講演会やセミナーで道内外を飛び回っておられるそうですね。
 小番 介護疲れで親子心中するケースは男性介護者に多い。当事者としてその心理や問題点などは理解できるので、講演会では自分の体験などを話しています。
 また、市民団体「男性介護者と支援者のつどい」の代表も務めており、月に1度当協会セミナールームで親や妻の介護を担う男性がお酒を交えながら語り合う「男性介護を語ろう居酒屋」を開いています。

シニアライフカウンセラー養成講座の様子

高齢者施設のバスツアーも実施

協会が身元保証した男性との思い出は強く印象に残っている

創成川通り沿いにある「シニアライフサポート協会」(札幌市中央区)

高齢者の相談に乗る小番代表

シニアライフカウンセラー養成講座の様子

高齢者施設のバスツアーも実施

協会が身元保証した男性との思い出は強く印象に残っている

単身者の身元保証にも対応

 ──1日に寄せられる相談件数はどれくらいですか。
 小番 電話での相談は30件くらいで、直接来所される方も20人ほどいらっしゃいます。ケアマネやソーシャルワーカー、役所からの紹介が多いですが、有料老人ホーム・高齢者住宅の無料バス見学ツアーの宣伝を見たとか、メディアの紹介記事を読んで来られる方もいます。
 ──住まい以外ではどのような相談が多いのですか。
 小番 不用品の片付けなどに関する相談は家族からも多く寄せられています。あと、最近増えているのが葬儀に関するものです。家族のいない一人暮らしの人が多く、葬儀を頼む親族がいないので、当協会で葬儀をやってほしいなどです。また、東京に嫁いだ娘がいるが、夫の手前もあり頼みたくないなどを理由に、身元保証の相談や問い合わせも多くなってきました。身元保証は札幌近郊を中心に100件ほど引き受けています。
 ──最近、70代のシニア男性にクレーマーが増えているということが問題になっていると聞きますが、そのような相談は寄せられていますか。
 小番 団塊の世代は多様な価値観や意識を持っており、我慢を美徳とする80代の日本人に比べると自己主張が強いように思います。このため、高齢者住宅や有料老人ホームで行き過ぎた言動がきっかけとなり、入居者や施設のスタッフと摩擦を起こすこともあります。ただ、コミュニケーション不足による衝突もあり、我々が中に入ることで関係が改善するケースもあります。入居後のサポートには、このようなことも含まれています。
 ──4年間の取り組みの中で特に印象に残る事例はありますか。
 小番 私たちが身元保証に取り組むきっかけとなった認知症の男性がいました。彼は生活保護を受けながらアパートで一人暮らしをしていましたが、認知症が進み尿失禁などを繰り返し家主から退去を迫られていたのです。病院に入院したものの、誰かが新しく身元保証を引き受けてくれないと、退院後に帰る場所がなかった。それで、困り果てた区の生活保護課の職員から協会にSОSの電話があったのです。それで、私たちが身元保証人になり、男性は新しい高齢者住宅に入所することができました。昨年86歳で亡くなった際も、私たちが葬儀から納骨を執り行いました。
 ──以前住んでいたアパートはどうしたのですか。
 小番 匂いが沁みこんでいたので、床をはがして取り替えなくてはならない状態でした。毎月の保護費の中から2000円ずつ返済することになりましたが、結局、返済を終えないうちに亡くなりました。
 ──最後は病院で看取られたのですか。
 小番 高齢者住宅から、下血したと連絡があり救急車で入院しましたが、最終的には大腸がんと肺がんを併発して亡くなりました。身元保証人として医師から病状についての説明を受け、住宅に戻るか病院で亡くなるかの選択をしました。男性はコーラが大好きで入院中も毎日コーラを楽しみ、最後は穏やかな顔で息を引き取られた。音信不通になっていた娘さんに最後まで、会えなかったのが気がかりではありましたが、その方の人生に最後までお付き合いさせていただいた。そんな充実感はあります。
 ──本日はありがとうございました。ますますの活躍をお祈りしています。

■一般社団法人「シニアライフサポート協会」
札幌市中央区南2条東1丁目1の11第3泊ビル1F・3F(TEL:011-200-0947)
■NPO法人「札幌高齢者住まいのサポートセンター」
札幌市中央区南2条東1丁目1の11 第3泊ビル1F(TEL:011-200-0747)
※いずれも定休日は日曜、祝日。営業時間は午前9時から午後6時。事前予約で時間外対応可能

ザイ・コンファーム社・小林健治氏の貸金業法疑惑を追う

道警不祥事から考える〈26〉

札幌佐藤病院グループの「しんふぉに~28」

札幌禎心会病院「陽子線治療センター」

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