「ガンマナイフ」に最新装置を導入した札幌の中村記念病院
リニューアルしたガンマナイフで脳疾患の放射線治療が大きく前進

2018年10月号

リニューアルされたガンマナイフパーフェクションと院内スタッフ(中央男性が中村理事長)

Medical Report

日本有数の脳神経外科専門病院として知られる社会医療法人医仁会中村記念病院(札幌市中央区/中村博彦理事長・院長/499床)は、脳内疾患専用の定位放射線医療装置「ガンマナイフ」の機能更新を行ない、8月27日から本格稼動させた。脳腫瘍などの治療効果をより高めるため、同病院の「ガンマナイフパーフェクション」に付属装置「Icon(アイコン)」を導入。ハードとソフト全体の更新によって治療困難とされた病変部をはじめ、より大きな腫瘍などにも対応を可能にした。国内におけるガンマナイフ治療をリードする同センターの取り組みを中村理事長に訊いた。(8月28日取材)
 

道内唯一の導入施設として500人前後の患者を治療

 メスを使わない脳外科手術と言われるガンマナイフ──。これは、MRIやCT、脳血管撮影などの検査結果をもとに立てたプログラムに沿って、放射線の一種であるガンマ線を腫瘍などの病変部に集中的に照射し、周辺細胞へのダメージを最小限に抑えながら治療するものだ。
 スウェーデン・カロリンスカ大学のレクセル教授が考案し、1968年に実用化された。病巣をシャープなナイフで切り取るように治療できるのが、この名の由来。半球状のヘルメットに配置された192個のコバルト線源から細いガンマ線ビームを病巣に集中して照射する仕組みで、定位放射線治療装置として普及している。
 治療は頭部に局所麻酔をかけ、特殊なフレームを装着してから行なう。適応となるのは、良性脳腫瘍、悪性脳腫瘍、転移性脳腫瘍、三叉神経痛、脳動静脈奇形などの病変部。切開手術の難しい脳内の腫瘍や血管奇形などの治療に高い効果が期待できる。治療の誤差は0・5ミリ以下と極めて精度が高い。
 中村記念病院では1991年5月に日本初の臨床用として導入。現在同病院の「ガンマナイフセンター」は、北海道内唯一の治療施設として年間400人から500人の患者の治療に当たっている。
 この中で同病院のガンマナイフ「パーフェクション」の機能更新工事が8月上旬から26日にかけて行なわれた。
 最新鋭の付属機器「Icon(アイコン)」は、頭部を固定する従来のフレームの他に初となる痛みのないマスクシステムを導入したのが特徴。これによりさまざまな形の病変に応じてガンマ線を分割照射できるようになった。更新前のガンマナイフは3センチ以下の腫瘍に対して有効とされ、手術で腫瘍を小さくしてから治療を行なうこともあった。
 一方、「Icon」は、前述の「マスクシステム」によって、より大きな腫瘍や治療困難とされた位置の病変部にも治療効果が期待できるという。使用時は、照射中の患者の動きを赤外線でリアルタイムにモニタリングし、設定範囲を超えて動いた場合には自動的に照射を停止するプログラムが起動する。
 治療後は、翌日には退院することができる。身体的負担が少ないため高齢者でも安心して受けることが可能。先端医療だが公的保険が適用されるのも大きなメリットだ。「ガンマナイフ治療はハード、ソフトとも進化し続けています。今回のIconの導入により、対応できる疾患の範囲を広げることが可能になりました。先天的な血管奇形などは大出血すると死に至るケースもあり、以前のガンマナイフでは小さなものしか治療できなかったのですが、今後は大きな奇形にも対応できると思います」(中村理事長)
 脳にできる腫瘍の大半は良性だが、増大すると周囲の神経を圧迫し、運動障害や視力障害などを起こすことがあるので早期の治療が望ましい。その点、ピンポイント照射で体への負担の少ないガンマナイフ治療は安全かつ有効と言える。
 一方、同センターが手掛けるガンマナイフ治療で最も多いのは、肺がんや乳がんなどが脳に転移した転移性脳腫瘍で、これらの昨年の治療件数は307症例だった。
 

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患者のQOL向上に果たすガンマナイフの大きな役割

 放射線を病変部のみに集中するガンマナイフ治療は、これらの転移性脳腫瘍にも治療効果が高いという。また、通常の放射線治療は周辺正常細胞へのダメージを避けるため治療は一度しか行なわないが、ガンマナイフ治療は再発脳転移の場合でも腫瘍の場所が異なれば再び照射することができる。
 ガンマナイフセンターを束ねる高梨正美センター長(脳神経外科部長)は、患者が診療を受けていたがん専門病院の主治医とコミュニケーションを図りながら治療に当たっており、この点でも安心できる。
 転移性脳腫瘍は手足の運動麻痺などを伴うことが多いが、ガンマナイフで腫瘍が小さくなると運動機能の回復が見られるケースもある。また前述の三叉神経痛については、基本的に同院の「MVD(微小血管減圧術)センター」で治療を行なうが、高齢者や心疾患のある患者には体への負担の少ないガンマナイフを選択する場合もあるという。「実際ガンマナイフは、患者のQOL(生活の質)向上に大きな役割を果たしています」(中村理事長)

ガンマナイフセンターの高梨正美センター長

新たに導入されたマスクシステム

期待される「ガンマナイフ Icon」

ガンマナイフセンターの高梨正美センター長

新たに導入されたマスクシステム

期待される「ガンマナイフ Icon」



 脳神経外科に特化した歴史ある専門病院として優れた脳神経外科医を輩出している中村記念病院だが、近年はきめ細かな専門治療を提供していることでも知られる。
 今回取り上げた「ガンマナイフセンター」のほかに、現在では「脳卒中センター」「脳腫瘍センター」「脳血管内治療センター」「MVD(微小血管減圧術)センター」「神経内視鏡・下垂体センター」「脊椎・脊髄・末梢神経センター」などを開設。診断・治療技術の進歩により、さまざまな脳神経外科分野の疾患をより正確・安全に治療する体制が整えられている。
 また院内には循環器内科や消化器内科、整形外科、耳鼻咽喉科、眼科、呼吸器内科などの診療科も併設。他診療科と連携しながらチーム医療に取り組んでいる。
 日進月歩の医療で患者の治療選択の幅は近年広がりを見せている。ただ脳神経外科の分野で、中村記念病院のように最先端の治療機器に加え経験豊富な医師やスタッフが充実している医療機関は国内でもまだまだ限られている。
 進化し続ける同院の今後に注目していきたい。



社会医療法人医仁会 中村記念病院
札幌市中央区南1条西14丁目
TEL:011-231-8555

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